善に達するチカラ: 忍耐・堪忍の本当の意味
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これからダンマパダの『諸仏の教え』と呼ばれる偈(Dhammapada183-185)を参考にして、「忍耐」と「堪忍」というキーワードについて解説したいと思います。『諸仏の教え』は三つの偈で構成されており、結論として、「Etaṃ buddhāna sāsanaṃこれは諸仏の教えである」というフレーズが二回出てきます。この経典の特色は、これこそがブッダ達の教えですよ、と決定していることです。「ブッダとはどのような人格なのか」と知っている人々にとって、この偈は宝物のような教えになるはずです。なお、本書では一八三偈と一八四偈を参考にしますが、一八五偈については説明を省きます。
ブッダとは何者かと知らない人々なら、ブッダの教えに興味を抱くことはないでしょう。まず、ブッダとはどのような人物なのかと理解する必要があります。ひとが真理を発見して、生きる苦しみを最終的に乗り越えたならば、ブッダといいます。ブッダとは、真理を発見した人、覚った人、という意味です。論理的には、真理を発見する人は誰でもブッダと呼ばなくてはいけなくなります。テーラワーダ仏教では一般的に、最初に真理を発見した先駆者たる釈尊に「ブッダ」という言葉を使います。弟子たちが真理を発見したら、アラハン(阿羅漢)という敬称で呼びます。これは、師匠と弟子を区別するために工夫したのです。しかし、お釈迦さまもアラハンの一人であることに変わりありません。アラハンとは、聖者、尊敬に値する人、人格を完成した人を意味します。人格を完成した方、智慧を開発した方、真理を発見した方(ブッダ)のメッセージに、みな耳を傾けるべきでしょう。では、ブッダは我々にどのようなメッセージを伝えたいのでしょうか?
「Etaṃ buddhāna sāsanaṃ」というフレーズで結ばれるダンマパダの偈では、ブッダ達が人類に語りたかったことを見事にまとめて、表現しています。これらの偈を丁寧に理解するならば、仏道とは何かと各自で発見することができるはずです。この偈では、「真理とは何か?」というような難しいことは語られていません。その代わりに、真理に達する方法が語られているのです。まずはダンマパダ一八三偈(諸仏の教え)を読んで、具体的に調べてみましょう。(本文より)
目次
第一章 ブッダが教えた「善に達する方法」
『諸仏の教え』のキーワード
一切の悪を犯さないこと
善に至ること
自らの心を清めること
平和の実現
実践の仕方を詳しく
第二章 忍耐とは我慢ではなく「落ち着きの心」
Khanti(kṣānti)・忍耐
苦行は無意味
最上の修行
ハードルを乗り越える人は成長する
ハードルとは何か?
生きることも楽ではない
俗世間のトラブル
「こうすればよかった」は悪魔の誘惑
正しく生きる道
諸問題を根こそぎ解決する
高度な目標・目的を目指す
Khantī・忍耐は必需品
第三章 堪忍とは障害・邪魔を巧みに避けること
Titikkhā・堪忍で障害を避ける
堪忍がなければ人生に負ける
忍耐があれば堪忍もついてくる
第四章 忍耐と解脱
忍耐の活用法
勘違いの続き
Khantīとtitikkhāのまとめ
Khantīとは解脱の智慧です
随順忍耐