テーラワーダ仏教「自ら確かめる」ブッダの教え
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ブッダが教えた幸福の道とは何か?
私たちが幸福になるために欠かせない「心の科学」と「自由」
(あとがき より)
ブッダの教えは信仰の有無を問いません。たとえ大乗仏教を信仰していようと、イスラム教徒であろうと、無宗教であろうと、ブッダの教えは迷いを抱えて生きる人類すべての役に立つのです。本文でも述べたように、ブッダの教えを学ぶ上でやみくもな信仰心は邪魔になります。初期仏教では、教えに対する批判も、教えが本当かと調べることも、禁止していないのです。パーリ経典の中で、ブッダは私たちが悪を犯すことをきつく批判されています。しかし、「嘘をつくなかれ」と一方的に命令はしないのです。「こういう結果があるので、嘘はつかない方がいいでしょう」と、相手に選択の自由は与えた上で、嘘をついたら不幸になりますよ、という結果だけはきちんと教えるのです。
ブッダから正しい生き方を教えてもらったのに、本人がそれとは別の悪い判断をしたなら、それは仏教の責任ではありません。ブッダが駆けつけて、その人を守ってあげることはしない。「自業自得」ですから、誰も守ってはくれないのです。ブッダは「自分のことを自分で守りなさい」と教えています。では、ブッダはなにをしてくれるのでしょうか? 「自分の守り方」を教えてくれるのです。それでブッダの責任は終わりです。
人間が脅えなく、自由に生きていられる力をブッダが与えてくれるのです。矛盾する表現かもしれませんが、ブッダの教えとは「反宗教の宗教」なのです。他宗教の人々が他者をマインドコントロールするために使う手法は一切使いません。ブッダも「信」という言葉を使いますが、他宗教とは意味が違います。ブッダの語る「信」とは、自分でとことん調べ、実践して、その教えがなるほど真理だと理解して納得することなのです。本書を通じて、読者の皆様がブッダの自由な世界に親しんで下さるならば、ありがたく存じます。
目次
Lesson1 はじめにブッダあり(1) ブッダの教えは心の科学
Lesson2 はじめにブッダあり(2) 仏教を宗教から解放する
Lesson3 はじめにブッダあり(3) 自利と利他は分けられるのか
Lesson4 在家生活のマネジメント(1) 期待を叶える四つの方法
Lesson5 在家生活のマネジメント(2) 成功を妨げる五つの障害
Lesson6 在家生活のマネジメント(3) 財産は正しい管理で活きる
Lesson7 社会の繁栄と安定のために(1) なぜ社会が衰退するのか
Lesson8 社会の繁栄と安定のために(2) 民主主義の実現を説く
Lesson9 社会の繁栄と安定のために(3) 逆転の発想で「衰退」を活かす
Lesson10 五戒のススメ(1)総論と不飲酒戒 五戒を守ることは仏道を歩むこと
Lesson11 五戒のススメ(2)不妄語戒 なぜ嘘をついてはいけないのか?
Lesson12 五戒のススメ(3)不邪淫戒 仏教と性道徳
Lesson13 五戒のススメ(4)不偸盗戒 法則に従って生きる
Lesson14 五戒のススメ(5)不殺生戒1 なぜ殺してはならないのか
Lesson15 五戒のススメ(6)不殺生戒2 対話を通してさらに考える
Lesson16 五戒のススメ(7)まとめ 戒律の真髄は「慈しみ」
Lesson17 自己観察がひらく自由への道 五蘊の分析
Lesson18 「諸仏の教え」を読む(1) 解脱に至る善行為
Lesson19 「諸仏の教え」を読む(2) 出家者への戒め
Lesson20 初転法輪 ブッダが最初に語ったこと(1) 聖なる中道を歩め
Lesson21 初転法輪 ブッダが最初に語ったこと(2) 八正道はいかに実践するのか
Lesson22 初転法輪 ブッダが最初に語ったこと(3) 四聖諦はこうして完成する
Lesson23 「自ら確かめる」ブッダの教え(1) 信仰には立場がない
Lesson24 「自ら確かめる」ブッダの教え(2) マインドコントロールを超えて
あとがき
※『テーラワーダ仏教「自ら確かめる」ブッダの教え』は、2010年10月に大法輪閣から刊行されました。電子書籍化にあたって内容に再編集を加えました。