宮本武蔵の「五輪書」の注解書は多く存在しますが、史実や歴史的資料としての訳にこだわりすぎたり、畑違いの人間が的はずれに意訳しすぎたり、吉川英治の小説に感化されすぎた内容であったり、終いにはビジネス書や自己啓発書として捻じ曲げられたりしています。
これらのどれもが口をそろえて「五輪書は徹底した合理主義で書かれた戦いの書」などと言っていますが、
それなのにわざわざ内容を剣術武術以外に置き換え、贅肉にまみれさせています。
五輪書は現代語訳も注解もいらないほど簡潔で、原文をそのまま読んでも内容は十分通じる物ですが、
この簡潔な文の中に深い武の妙要を隠しこんでいる箇所が多々あります。
武蔵の崇拝者でもなければ思い入れも無い著者が冷静に解析し五輪書を純粋な戦いの教科書として、
五輪書の地水火風空の五巻のうち戦いに特化した章の「水火の巻」について注解し、
剣術のみならず、体術、気術、戦術をからめ読み解きます。
剣道愛好家の方や武蔵崇拝者の方々にはご理解できない内容かもしれませんが、
合理的な武の探求者や達人の鳳雛には上達の一助、指南になると思います。
五輪書はバイブルでも秘伝書でもありません。
剣豪の遺した純然たる剣術戦闘のテキストブックです。
剣を持たない現代の武術や格闘技にも応用できるよう注解しましたので、
真の修行者にご一読いただければと思います。