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ハイヒールで踏み殺された者たちへのレクイエム: アルトカルシフィリア

価格: ¥0
カテゴリ: Kindle版
ブランド: 光英出版
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(あらすじ)

人里離れた森のなかの屋敷。老作家の書生として住み込みのバイトをはじめたミコだったが、そこではすべてが謎にみちていた。ハイヒールやパンプスを好み、女性から踏まれたがる奇妙な性癖を持つ老作家。屋敷のお手伝い環(たまき)との出会い。老作家から校正を頼まれた原稿の中身。写真立てのなかの若く美しい女性。屋敷の庭の桜の木。花壇の花たち。それらが深く絡みあいながら創作と過去につながるとき、ミコは自身の悪夢の根源を知る。


(内容より一部抜粋)

ハイヒールが歩きはじめる。踏み方、その重みに遠慮はない。それどころか、踵にだけ体重を集めている踏み方だった。さっきまでの美の苦痛がだんだんと黒ずんでくる。美としての限界が見えてくる。それでもハイヒールはかまわず、私を踏み続ける。背からはおりない。そんななか、なぜ、こうなったのか、私は冷静に考えている。圭子は私は踏めないから、かわりに代理人を踏んでいたのではなかったのか? では、なぜ私は踏まれている? ヒールの先が後頭部を何度も刺す。まるでアイスピックで刺されているようだった。金属的な鋭い痛みが頭の芯で響く。床に頭が転がる。すかさず、その横顔をハイヒールが踏みつける。靴底は代理人の血でぬれている。代理人の血にまみれることで私は彼と一体になる。踏まれるその先にある快楽の死の淵をしばらくさまよう。

女性がはいた靴を飾るということ。そもそもそのこと自体、ミコには信じられない。地べたに一番近く、身体の部位でも低い足。女性でも夕方には足の汗でかなり汚い。もちろん匂いもする。ブーツの場合は蒸れて、さらに匂いがきつくなる。ホルモンの分泌が盛んな女性は匂いで悩む人もけっこう多い。そんな女性の足を男性はどうしてこうも崇めるのか。