踏まれ老醜回想録: アルトカルシフィリア
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【あらすじ】
アルトカルシフィリアシリーズ。独居老人の私は、脳出血で倒れ、手術を受ける。その後遺症として、脳機能が低下したとまわりからは思われているが、じつは演技だった。むしろ頭は手術前より冴(さ)えていた。それをいいことに、性欲をむきだしにした私は、女性の脚や足を舐めたり、靴を舐めたり、生き物を踏ませたり、自身が踏まれたりと、次々と奇異な問題行動を繰り返す。しかし、あまりにも行き過ぎた私の問題行動に、若く美しいナースやケアマネジャーは仕事を辞めてしまう・・・
【内容より一部抜粋】
それほどまでに、ハイヒールから踏まれたかった。暗がりを舞う優雅な蝶にふれたい、そんな気持ちだった。妖艶な女性の実体(体重)をこの手のひらで感じたかった。きっと、美しい女性から踏まれたときの重みは、鳥の羽根のようにかるく、心地よいはずだとちいさな頭で想像した。しかし、そんな想いとは似ても似つかぬ、強烈な苦痛が、右の手のひらの、真ん中に突き刺さった。ヒールが手のひらを貫通したような感覚に、甘い幻想は吹き飛び、一瞬で頭の中が真っ白になる。よく声を出さなかったものだと我ながら感心する。じわじわ、苦痛が全身に染みわたり、現実を思い知る。正確にいえば、現実の女性にそなわった肉体感を知る。
だんだん生徒の数がふえはじめ、群衆としての性格を帯びはじめると、そのあたりから、彼女たちの足の運びがあやしくなる。一目散に、それを踏んでいく子や、律儀に歩調や歩幅を合わせ、蹴ったり、踏んだりする子があらわれはじめる。さらに大勢になると、足もとへの関心が薄くなる。まわりの友達と話しながら、無意識のうちに、サンドイッチを蹴ったり、踏みつけたりする。パン! と包装のビニールが破裂する音でも、たいして驚くわけでもなく、何よ、これ、と踏んだ子は自分が踏んだ正体を目で確認するだけである。そして、そのまま歩いていく。蹴ったり、踏んだりした子たちは、たいていが、うしろをふり返らない。そうやって、踏まれ続け、ひしゃげ具合がひどくなると、もう容赦はない。大勢の女子高校生たちからの気まぐれな足運びの餌食となる。