妹の僕が踏まれる理由: メタモルフォーシス
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【あらすじ】
メタモルフォーシス(人間から物や他の生命に変身し、女性から靴で踏まれ続ける異端メルヘン) ユウジの僕は死んだ。しかし僕の意識は妹の早苗の体に入っていた。妹の僕は、早苗のかわりに女子高へと通うが、女の子たちの実態、性格の悪さ、不潔さ、陰湿さなどを目の当たりにして、神秘化していた彼女たちへの憧憬もさめてしまう。それでも女の子の脚や足や靴への想い、そして彼女たちに踏まれたいと願う僕。女の子から、踏まれても踏まれても、踏まれたりない僕。さらにその想いがエスカレートすると、今度は、踏まれる理由を求め、白いヤモリへと変身していた・・・
【内容から一部抜粋】
後頭部に何かがおりてきた。それは感触から、すぐにモモコの上靴だとわかった。頭を踏まれている。トイレの床を踏んだ上靴で踏まれている。妹の僕はトイレの床と同等になった。踏んでいるとき、モモコがいったい、どんな顔をしているのか、またどんな気持ちで頭を踏みつけているのか、想像するだけだった。頭部から重みが消えると床についた左手の指先から甲にかけて、かるい圧痛をおぼえた。左手を黄色いゴムのふちの上靴が踏んでいる。右手の甲にも同じ圧痛。土下座して床についた両手を踏まれていた。
*
気がつくと、コンクリートの座面に手だけが残されている。ヒールで踏まれた手だけがある。手は息をしていない。死体のようだ。両方の手のひらの真ん中はくぼみ、アザになっている。ヒールで踏んだことは確実にわかっているはずのメグミから言葉はない。左隣のコンクリートベンチのはしで踵を返したブーツのつま先が手をにらむ。視線をあげる。メグミの顔は白く、表情はない。やはり踏まれるのは危険だ、と今さらながら思う。急に危険が現実味を帯びる。メグミから踏まれることに、どんなに甘い妄想を描こうが、ブーツにかかる重みは現実だ。現実の肉体としてメグミがそなえた重みで踏まれるのだ。