全十二巻堂々の復刊 その三
★★★★☆
大老・井伊直弼が桜田門外で暗殺され、老中・安藤対馬守が襲撃され、生麦事件を始め外国人が襲撃・殺害される事件が続発し、攘夷に名を借りたテロリズムが横行します。その中心は水戸藩士ですが、徐々に薩摩や長州の藩士も登場します。現代で考える以上に、当時は武家階層から庶民に至るまで、攘夷思想の方が強かったようです。渋沢栄一もそんな一人だったようです。長井雅楽の優れた方策も結局は日の目を見る事はありませんでした。
幕府も、咸臨丸(当時としても相当なボロ船)をアメリカに派遣。太平洋横断という偉業を成し遂げますが、その後にヨーロッパに派遣した使節は、あまり褒められたものではありません。これも幕府には外交能力が無かったからだとしています。そして、公武合体の名の下に和宮降嫁を実現させて、幕権を回復しようとしますが、これも上手くいかず、朝廷を勢いづけてしまいます。当時の公卿が、低い七位八位の官位を蕎麦屋や魚屋の亭主に売っていたと言う記述には驚きました。