最新の校訂が反映された表題作
★★★★★
乱歩の代表作を収めた文庫本は、ほかにいくつもある。
より精選された短編だけを読むなら新潮文庫版『江戸川乱歩傑作選』。
作家的業績全般を概観するなら創元推理文庫版『日本探偵小説全集』の第2巻。
しかし、それら過去に刊行されてきた書籍(講談社江戸川乱歩推理文庫版全集も含む)と、本書の「屋根裏の散歩者」では、本文が一部異なっている。
雑誌初出時にはあったが、初版本では欠落していた記述を、今回初めて採用したため、いくつかの箇所で文章のニュアンスが変化している。
この点に本書の大きな特色があり、江戸川乱歩推理文庫版全集や、創元推理文庫版を既にお持ちの方も、少なくとも、この第1巻だけはお買いになった方が良いと思う。
プロバビリティの犯罪
★★★★★
◆「赤い部屋」
今宵も異常な興奮を求めて集まった「赤い部屋」の会の面々。
今晩の語り手である新入会員のT氏が、怪異な物語を語り始めた。
彼はこれまでに九十九人の人を殺害してきたというのだが……。
乱歩が谷崎潤一郎の「途上」という短編に触発されて
命名した「プロバビリティの犯罪」が描かれます。
「プロバビリティの犯罪」とは、明確な殺意を持ちつつも、直接的な行動を起こすことなく
人を死に至らしめることで刑罰から我が身をまもろうとする確率を利用した殺人方法です。
作中には、そうしたトリックが数多く盛り込まれているのですが、
オチに関しては賛否両論かもしれませんw
ミステリー界の巨匠の初期短編集
★★★★★
乱歩の作品の中でも特に評判の高い初期短編を集めた巻です。
トリックの見事さもさることながら、濃密な文体もまた魅力的。
ページ数が多く、しかも文庫版で安いのでとてもお買い得だと思います。
『人間椅子』が一番面白かった。
★★★★☆
光文社から出ている全集の第1巻。
「全集」だけあってとても多くの作品が収められており、本当に玉石混交といった感じ。
自分のような乱歩の初心者や、面白いとされている作品だけ読みたい人には、この光文社の全集は向いていないかも・・・
ただ、全ての作品に対して、乱歩の「自作解説」がついていて、これがかなり面白い。
例えば自分で「つまらない」と言っている作品もかなりあって、そういう作品は本当につまらない(笑)
基本的には文体も内容も古臭いと感じられるものが多いが、表題作の『屋根裏の散歩者』・『心理試験』・『人間椅子』等の有名な作品は流石に今でも面白い。特に『人間椅子』は素晴らしい。
「変態」(あくまで括弧付)を表現するのが上手い作家だなあと思った。
乱歩初期の傑作群
★★★★★
乱歩が初期に発表した作品
人間の異常心理を刻々と描く
表題作の「屋根裏の散歩者」と「人間椅子」
明智小五郎のスマートな活躍が描かれる
「D坂の殺人事件」と「心理試験」
乱歩を代表する短編たちが1冊につまっています。