そして、人物を見る目が変わる章。
これまで物語を悪いほうへと導くであろうと思われていた人物の心の叫びを聞き、この人物の印象が変わり、
善人と思っていた人物がなにやら怪しい雰囲気で・・・。
物語はどんどんと私の想像とは違う方向へと進んでいくようだ。
山賀葉子の言う「愛」は考え方は悪くはないが、型にはまりすぎている気がした。
そして浚介は二つの事件を経験して、少しずつではあるが人間としても教師としても成長しているようだ。
ここにきて気づいたのは、
この作品を大長編として一冊の本にまとめるのではなく、このように何冊かにわけたのは大成功だったということ。
普通なら夢中で読み進めてしまうところを、このシリーズの場合は一冊一冊を読み終えるたびに、ここでレビューを書きつつ考えて整理できる。
この刊行の仕方により、より一層、作品を堪能できている気がします。
麻生家で起こった子どもによる心中事件。実森家でも同等の事件が起きた。そして、遺書までが類似している。残虐なままに行われた心中は、果たして偶然なのか。馬見原は他殺説を未だに信じてやまない。そんな中浚介は、死んだ実森少年の通っていた高校の美術教師としてインタビューを受けてしまい、発言から自宅謹慎に。亜衣はホテルでの出来事から精神的なショックを受けてしまい未だ安定せず、どんどん悪い方向へ進むばかり。
展開が見えないな。あと二部。文庫にして600ページほどといったところか。それなりのページ数が残されているのでどんな展開が来てもおかしくはないのだが、見えない。
油井善博はもう一度冬島綾女とよりを戻したがる。親権を放棄したにもかかわらず、綾女の息子に近づく。馬見原はどんな心境なのだろう。あまり細かに書かれていないのがやや残念。
殆ど嫌なことばかりがこの小説に書かれている中で、浚介は心のよりどころを見つける。縦社会故に失言から謹慎になってしまった中で、さらには恋人にも見放された中で出会った青年。浚介は間違ったことをしていないと思うし、全てが肯定されるわけではないのだが、彼がちょっと悲しいかな。その悲しさも、ややぬぐわれた第三部の終盤。
連続して動物の死体を玄関に置くという事件を基本的に扱っていた馬見原。そして意外な証言者が。この事件と、麻生家と実森家の事件。浚介はどうなる、亜衣はどうなる。前半ややクローズアップされた游子はこの事件を見て、このあとを見てどう思うだろう。そして読者である自分は。