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Dの複合 (新潮文庫)

価格: ¥810
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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517ページを3時間で読ませる小説 ★★★★☆
宮部みゆきさんの書く小説は、登場人物と出来事の絡み具合の巧妙さにほとほと感心して、好きになったのだけれど。
その宮部みゆきさんが責任編集した松本清張傑作短編集というものを先日読んで、宮部みゆきさんが松本清張ファンということを知ったのだけれど。

この「Dの複合」、今まで読んだ松本清張作品の中でいちばん面白い。
というのは、登場人物と出来事の絡み具合の巧妙さにほとほと感心したからだ。
さすが、宮部みゆきさんがファンになるだけのことはあると思ったのだ。

所々にコミカルな部分を織り交ぜ、殺人事件を追い求めているというより、主人公伊瀬忠隆の好奇心とぼくの好奇心がぴったり一致して、伊瀬の「次はここに行ってみよう」とか「これが気になる」という筋の展開に疑いもなく同意し読み進めていくのだった。

517ページの長編なのだけれど、3時間で読み終えてしまった。
でも坂口みま子さんが殺されることはないと思うのだけれど。
清張版ダヴィンチ・コード!! ★★★★★
浦島伝説に興味をもった編集者と、
それに振り回されながらも次第にドップリとのめりこんでゆく作家。
話しは浦島伝説だけで終わるはずはなく、
クモの糸のように張り巡らされた伏線が、
いつの間にかあるひとつの終着点へと向かうのである。

Dの意味と時刻表、日本地図・・・。
半世紀も前にダヴィンチ・コードをしのぐ名作が、
この日本にもあったのだと言ったら大げさだろうか。

温故知新の極み、これ極まれり!!
嫌われることを覚悟で敢えて辛口に… ★★★☆☆
高橋克彦氏絶賛の一冊でしたので、読むのが楽しみでした。
時間がとれたので一気に読みました。
面白かったです。
しかし…

多分、この小説が書かれた頃には、とても新鮮な題材とストーリーだったのだと思います。
民俗学・神話・歴史と推理小説の融合。
うん、新鮮だったのでしょう。

しかし…
正直なところ、この2008年の今となっては、このジャンルは余りに手垢の付きすぎたものになってしまったのかもしれません。
本当に、正直、「なんだ、これだけの話か、」と思ってしまいました。
本当に、現代の目から見れば、良くある歴史推理物のレベルでしかないのです。

多分、現代の眼から清張先生の作品をどうこう言うのは余りにも不公正なのでしょう。
先駆者たる者、幾多のフェイクを生み出してしまうことは仕方のないこと。
そして、そのフェイクにまみれてしまうと、誰が先駆者かもいずれ分からなくなってしまう。
かつて江口寿史氏がそんなことをつぶやいていたシーンが思い浮かびます。

しかし、この作品に現代のレベルから見ても超絶級の期待をお寄せになられる方もきっと少なくないと思います。
この作品は、文化遺産として考える限りにおいて、またこのジャンルの先駆的作品として見る限りにおいて、とてもすばらしいことは間違い有りませんが、
今の視点から見ると、正直余りにも「普通」「ステレオタイプ」な作品になってしまっていることに言及する書評もそれなりの意味があるのかもしれません。

ああ、出来ることなら、高橋克彦氏のように、この作品が出た当時に読みたかった…
浦島、羽衣伝説の蘊蓄と、事件の謎との絡ませ方が絶妙。実に面白い歴史ミステリーです! ★★★★★
 作家の伊勢忠隆は、「月刊 草枕」編集部の浜中三夫から原稿の依頼を受けた。紀行文と随筆とをまぜた読みもので、「僻地に伝説をさぐる旅」というテーマで書いて欲しいというもの。依頼を承諾した伊勢は浜中とともに、浦島伝説と羽衣伝説にゆかりのある土地を訪ねる。ところが取材旅行を始めてから、伊勢の身辺に奇妙な事件が起きるようになった。取材旅行と事件の間に、何か繋がりがあるのだろうか? 不審を抱き、あれこれと推測を巡らせる伊勢と浜中であったが、やがてふたりは殺人事件に直面することになるのだった。

 とまあ、序盤の話の展開は、こんな感じ。話の経糸に、取材旅行の過程で起きる不可解な事件の謎を追いかけつつ、緯糸では、浦島や羽衣といった伝説の蘊蓄を傾ける趣向になっています。そして、このからくりに潜むあるキーワードが明らかになる件りから、思いがけない方向に話が転じていく終盤と、読み始めたら止まらない面白さ。
 また、「ああ、あの時の描写には……そういう意味があったのか」と、後になって思い出される何てことない場面での、用意周到な伏線の張り方。なるほどなあ、巧いもんだなあと、ミステリーを読む醍醐味を堪能しました。

 さらに、事件の渦中で伊勢がシャーロック・ホームズのことを思い浮かべる場面では、くすりとさせられました。そう言えばこの作品、あるホームズ譚と一脈通じるところがある話かなあと。そのホームズ譚のタイトルは、ぐっとこらえて言わずにおきましょう(笑)

 それと、本文庫の解説は先に読まないほうがいいですよ。作品のミソと考えられる点を明かしてしまっているので。本書の趣向にあっ と言わされるためにも、作品読了後にお読みになることをお勧めします。