散歩の愉しみを落語から広げてくれる本
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「明烏」の吉原、「品川心中」の品川、「茶の湯」の根岸など、落語の名作の舞台となった土地をその噺を得意ネタにしている噺家と著者が実際に歩いての見聞をまとめた一冊。
もっとも廓噺をマスターするために何度も吉原を訪れたという五街道雲助、池袋を舞台にした自作の新作落語ゆかりの場所をたどる柳家喬太郎以外は、どちらかと言うと作者の方が噺家を案内してまわったと言う印象です。
著者によると、少しだけ想像力を働かせるだけで「今まで見えなかった風景が見えてくるはず」だそうです。
最初の五街道雲助から最後の根岸編の春風亭一之輔へと、登場する噺家が順に若返っていきます。世代に応じてさまざまに違って見える風景があるということでしょうか。
散歩の愉しみを落語の世界から広げてくれる本です。