信仰と救いと
★★★★☆
救いを求める登場人物たちが、生き生きと動き回ります。
その中心を貫くのがひとつの愛で、最後の決着には感慨深いものがありました。
登場人物が信仰の高潔さと俗世の俗悪さのはざまで揺れ動く描写はリアルで、迫ってくるものがありますね。
この作者さんの特徴として、妙に肉感的な文章描写が多いことがあげられると思います。それこそいたるところに俗っぽい単語や卑猥な台詞が混じっていて、個人的にはそれが苦手な部類なので星をひとつ下げさせていただきました。
とは言え、それを差し引いてもあまりある魅力ある物語を綴るのも、特徴だと思います。お勧めです。
歴史物に興味がなくても一気に読める。
★★★★★
下巻は、上巻よりもさらにドライブがかかる。
上巻で登場した男達が、歳を重ね、それぞれの生き様と悩みが、家族も含めて鮮明に描かれる。
すべての登場人物が、幸せを求めている。その求め方や、思想がそれぞれ違い、実生活の世界の縮図を綺麗に本の中に構築されたという感じがした。その構成力と、登場人物のキャラクター描きわけがすごい。
宗教戦争もいろいろなフェーズ、時代、場所を経ながら、終焉に向かっていく。登場人物への思い入れが既に形成されているからかもしれないが、それぞれのタイミングでのハラハラ、ドキドキが増して、かなり厚い本なのですが本当に一気に読みきってしまった。お勧めします。
魂の救済
★★★★☆
ジラルダのジレンマを描きたかったんだろうなぁと感じた。肉体と精神が表裏一体ではないことを気づけるかどうかなのだろう。宗教が生活の一部になっている人種とそうではない人種とでは、相容れないこともある。宗教の違いで喧嘩や殺人事件に発展しない日本に生まれて本当に良かったと感じる。
恐いものなど何もない
★★★★★
上巻のプロローグをすっかり忘れ、「ハッピーエンドや」と喜ばされたのもつかの間。
エピローグを読んで「なんでー!?」と叫びそうになりました。
私としては、ジラルダの最後の心境を思わずにはいられません。
飛躍かも知れませんが、お釈迦様が6年間にわたる苦行の末に見い出したものは、放逸でも苦行でもない中道であり、ついに悟りを開かれました。
ジラルダも、カタリ派の身を削るような苦行の末に、「自分の安心はここやない。こっちにあったんや!」と心の底から思い、出した結論は、もはや他者の思いの及ぶものではありませんでした。
なんて言うか、もう何も恐いものがなくなったんでしょうね。
エドモンにしてみれば、「またジラルダに置いて行かれてもうた!なんでや!」だったでしょうけれど。
晩年モンセギュールを再訪し、エドモンは自分なりの答えを見い出しましたが、それが正解であったかどうかは分かるべくもありません。
知っているのはジラルダだけですもんね。
エドモンは自分の答えを見い出したわけですから。
「エドモンにはなんで及ばないんやろ」と思い続けたジラルダでしたが、最後だけはそうではなかったのかも知れません。