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無関係な死・時の崖 (新潮文庫)

価格: ¥578
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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「人魚伝」収録はこの短編集だよ! ★★★☆☆
やっぱり他の方も書いてますね。なんといっても「人魚伝」。
「時の崖」なんて駄作も入ってますが「人魚伝」ですべて帳消し。安部の短編のひとつの到達点です。
偶然見つけた人魚を自宅で飼うことになったひとりの男。他人には理解されない秘密の蜜月だったが、ある日男は破滅につながるあることに気付いてしまう…。
ここには直接的な性描写はひとつもありません。けれどそれよりもエロい、背徳的な行為に背筋がぞくぞくする。涙をなめとるんだぜ?それがこんなにドキドキさせるなんて!
SF/ミステリ的な要素も多分にあり、ぐいぐい引き込まれる。ホラーの味を強く感じる方もいるようだが、だってエロスとタナトスだもの(と言ってしまえば陳腐ではあるが)。つまりはまあ、そんなお話。
滅多に自分のことを語らない安部だが、ここには彼の嗜好の吐露ともいうべきものが濃厚にただよっている。
ニンフェットあるいはロリータ。支配と被支配が容易に逆転する隷属関係。色覚のエロティシズム。緑色。緑色。なにはなくとも緑色!

ところで表題にもなった「無関係な死」は、SF/ホラー作家レイ・ブラッドベリの初期ミステリ短編に同じ着想のものがありますね。「鉢の底の果物」だったかな?オムニバス『EQMMアンソロジー』(1962年、早川書房)に入ってます。偶然でしょうけど。
ダリの絵の様な世界 ★★★★★
醒めない悪夢に閉じ込められた様な世界観を描かせたら、
天下一品の作家です。

特にお勧めは「人魚伝」。小説というより一遍の詩で、
何度も読み返して陶酔したくなります。

甘美な話ではないけど・・・
こんなに濃密な物語に出会えたことに感謝。

「人魚伝」は素晴らしいと思ってたら、
他の方も同じことを言ってますね。やっぱり。
登場人物の"不安"が読む者に乗り移る傑作短編集 ★★★★★
とかく抽象的で難解な作品を書くと言うイメージがある作者が、人間心理の機微を具体的に描いた短編集。物語の進行に連れて増して行く作品の緊張感と登場人物の"不安"が読む者に乗り移り、その極限において現実世界の恐怖、哄笑、機知、悲哀等に転化される手腕は見事と言える。個人的には、鬼才F.ブラウン「まっ白な嘘」に文学的滋味を加えたような印象を受けた。

幻想味と哀切感が交錯する「夢の兵士」。まさに、F.ブラウンを思わせる奇妙な味の「誘惑者」。人間の曖昧性を描きながらも、ひたすら怖い「家」。「女か虎か」を哄笑談にしたような「使者」。「透視図鑑」は三つの小品から成り、監獄のような木賃宿を舞台にして人間の夢、孤独、欺瞞、矜持などを様々なタッチで綴ったもの。「賭」は謎が次第に膨らむ奇抜なホラ話を軽口体で綴りながら、金・能率・メディアと言ったものに支配されている現代社会を風刺したもの。「なわ」は身近な日常における恐怖がジワジワと染み渡る佳作。タイトル作「無関係な死」は本作の主旋律を奏でるもので、帰宅したアパートの自室に"無関係な死体"が転がっていた現実に向き合った主人公の狼狽、空虚な論理、妄想、機械的動作、策略、絶望などを描き、自縄自縛の中、迷路に陥る主人公の様をアイロニカルに映し出した秀作。「人魚伝」は冒頭から主人公の青年が物語の登場人物である事を意識している事を披瀝して驚かせるが、題名から人魚と青年との恋物語と思っていると...。ここまでの怪異譚になるとは。落ち目のボクサーに託して、人間における時間の連続性の問題を描いた「時の崖」。

バラエティに富んだ親しみ易い題材を用いながら、時にはユーモアと諧謔も交え、人間心理と社会問題を鋭く抉った傑作短編集。
無限大の一場面物(無関係な死) ★★★★☆
安部氏のものでは読みやすいのではないかという短編集。表題作でもある無関係な死の場面は主人公の部屋のみです。そこに横たわる見覚えのない死体をどうするか、その状況をどう回避するか、についての主人公の内面の葛藤がごく論理的に描かれています。自分に落ち度はないのだから正直に行動すればよいところを、どうにかその状況と無関係になりたいがためにどつぼに嵌まっていく人間の滑稽さを絶妙に表しています。物事を証明することの難しさ、そして物事の真相の見えにくさ、を実感させられる小説です。
これを買いなさい! ★★★★★
この短編集は安部公房が一番脂が乗っていたときに書かれた作品が中心になっている。であるから、無視していい作品は一つもない。特に注目すべきは『人魚伝」である。この作品はおそらく安部公房のキャリアにおける最高傑作のひとつではないだろうか? 短編なので注目されてはいないだろうが、作品のクオリティに関しては『砂の女』や『燃えつきた地図』のレベルに位置している。ホラー小説としても充分通用するし(というか、この作品を読んでしまうと大半のホラー小説がまがい物に見えてくる)、残酷な童話としても通用する。
しかし、安部公房といい三島由紀夫といい、あとほぼ同年代の遠藤周作もそうなんだけど、この世代は凄いな。曲者の実力者ばかりで今じゃ考えられませんねぇ。