どんでん返しなどはありはしない。不幸な予兆はさいごまて消えることはない。読後感もこれまた重い。死にそうな人間は死んでいく。不幸な人間はどこまでも不幸。人はなんのために生きるのだろうか。ユーモアのかけらもなく、淡々とした文章がよりリアルに不幸を描く。
流行りの、若々しい書き手のものとは対極にあるといえる。読みたくない、と思う人も多いだろう。作者名として「車谷長吉」の名前を見つけたときから、暗い予兆が胸を覆うのだ。
それでも、この人の小説は読まなければならないのである。