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贋世捨人 (文春文庫)

価格: ¥1
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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ネガティブから生まれるエネルギー ★★★☆☆
この作品は作者の肉である。従って他人がその内容について評価を下すような性格のものではない。 人の世は苦に満ちているとして、その対処の方法には大きく二つあるように思われる。金や社会的地位、権力など外的要素を用いる方法と、自己の内的要素を源とする方法と。作者が選んだのは後者であり、その手段は執筆である。しかし、作者にとって救済であるはずの執筆という行為は、その体に大蛇のように絡み付き締めあげ、さらに深い闇へと引きずり込もうとする。作者はそれと格闘しながらも書き続ける。 最近の日本では他人を貶めることで自己の地位を保つ生き方が顕著であり、その極端な発露が殺人であるような気がしている。自己と向き合うことのいかに困難なことか。その実践者としての作者がうごめくこの作品は、読む者に生きる覚悟を灯すのかもしれない。
暗さに秘められた強さ ★★★★☆
車谷長吉が慶應義塾大学を卒業してから文芸作家になるまでを描いた私小説。

車谷本人が持つコンプレックスを通じ、愚図・腑抜けとして描かれた童貞、買春、転職、落選、失恋、出家、都落ち。そして、回帰。

腐れ、商業。
自身の暗さに向き合う本人の姿が、むしろ爽快にも感じる男振りな一冊です。

かっこいい☆
下を向いて行きよう ★★★★☆
最近、この著者にはまっている。どうして、どちらかというと根暗で後ろ向きのこの著者の作品に惹かれるのだろうか。
 車谷さんの生き方が不恰好で、どんくさくて、スマートからほど遠いところに共感を覚えているのかもしれない。

 慶応を出て商社・出版社と転職し、流れ流れて料理屋の下足番へ。西行にあこがれたそうだが、母親に西行は山の中にいても荘園からの上がりはたくさんあったと非難される。
 もともと、そんなに裕福でない家庭から無理して大学を出してもらったのに、料理屋の下足番に満足している息子に母親は満足できなかったのだろう。
 

 彼は資本主義における金儲け主義が気に入らず、反体制主義者だ。だからといって、特別なことをするわけではなく、日々の仕事を坦々とこなす。

 僕は世捨人になるほどの勇気はないから、仕事にしがみつき今の生活を何とかよくしようと悪戦苦闘しているわけだが、彼の考えもわかる。深いプールの真ん中で手足をばたばたさせている僕の隣で、車谷は何もせず浮いている。どうしてそんなにあせってバタバタしているんだい、何もしなくってももともと何も持たずに来て、何も持たずに行くだけなんだよと彼にいわれているような気がした。