全て実名で登場する医療機関やその治療方法の違いは、「ブラックジャックによろしく」を思わせる痛烈な批判も盛り込まれ、赤裸々さにハラハラさせられます。しかし、柳さんはた東さんに少しでも長く生きていて欲しかったので、苛立ちも焦りも克明に記したのでしょう。
時として、息子の丈陽くんより東を優先させるほどの深いつながりに、人の絆の不思議さを感じつつ、健やかに育っている丈陽くんの様子は
一条の希望の光のようです。
生と死がクロスする、こんなに数奇な運命に翻弄されるのも柳美里の小説家としての宿命の一つなのでしょうか。
彼女にしか書けない現実です。
教科書どおりの治療一辺倒の国立がんセンター中央病院にシビレを切らし、ニューヨークのスローン・ケタリング癌センターまで治療に行ったり、ラディカルな抗がん剤治療をされる平岩医師その他についても詳しく記載されてます。治療法はいくらでもある、と知ることが出来る一冊でもありますが、たとえば代替療法などは、使ってみてダメだったものなども正直に報告されているので、数多くある治療法で迷った時には、消去法で選択するための指南書として価値ある一冊ではないでしょうか。
治療を受けた病院や医師名まで実名で書かれてて最初ビックリしましたが、実名だからこそ信憑性も高い。