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生(いきる)

価格: ¥1,300
カテゴリ: 単行本
ブランド: 小学館
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   妻ある男性の子どもの妊娠・出産と、師として、父親として、そして恋人としての関係を15年間続けてきた劇作家の東由多加の闘病生活の介護の日々を、2つの命の交錯として描き、センセーションを呼び起こした『命』、『魂』に続く「命三部作」完結編である。

   国立がんセンター中央病院を出て、昭和大学付属豊洲病院へ転院する東。3人の女性たちの手厚い介護の中、わずかな可能性にかけた抗ガン剤治療は死を前提とした延命治療へとシフトしていく。生後2か月の丈陽を友人の町田康夫妻に託し、東の個室に寝泊まりし、介護の合間に原稿を書き、治療費の工面をする「わたし」。ここで語られるのは日常の中の戦争だ。「わたし」の肉体と精神は極限まで追いつめられ、さらに追い討ちをかけるように強姦未遂事件に巻き込まれる。一時帰宅の後、再び入院する東に残された時間はわずか。周囲の祈りも空しく、ついに彼はこの世を去る。

   2000年3月26日から4月20日までの26日間が、作者の驚異的ともいえる記憶によってたどり直される。ここにあるのは、ありきたりの感動に収束しない強い意志の物語である。東の死後、作者は自死を考える。断ち切りがたい死への欲動を振り払い生の世界に生還した者だけが書きうる物語、その稀有な物語が「命三部作」だ。「生(いきる)」 という作品タイトルに込められた意味をかみしめつつ読み進めたい作品である。(榎本正樹)