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マラケシュ心中 (講談社文庫)

価格: ¥8,593
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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ジゴロ→白い薔薇→猫背→マラケシュ ★★★★★
相手のすべてを手に入れたいと思ったら、何をすればよいのだろう?

接吻か。体液の交換か。
社会的に認められるための契約か。
時間と経験の共有か。
肉体的快楽と精神的充足の追求か。

ひとつの解として、残さず愛したいという気持ちの成れの果てが
害意になる、その描写がとても緻密で誠実な作品である。多くの
魅力がある作品ではあるが、ありふれた心理変化を精緻に切り取っ
て形に残した点が自分には一番、見事だと思えた。

ジゴロで中山作品にはまり、白い薔薇の淵まで、猫背の王子、
マラケシュ心中と追いかけた。
徹底して自己愛の強い主人公たちを見ていると羨ましくもあり、
そんな気持ちを持たずに生まれてよかったとも思う。

他者を際限なく受け入れる包容力と、自己を脅かすものを容赦なく
排除する自己愛は対極に位置するのだろうけれど、ただひとつ諦観
という接点がある。前者は自我を傷めることへの、後者は他者に受け
入れられることへの。

愛は、対象の中に、自分とのほんの僅かな接点を探させる。
接点が諦観のようなものであった時、始まった瞬間から終焉が開けて
いる絶望とそれゆえに究極的な邂逅であることへの確信が生まれるの
かもしれない。

生き方を選ばねばならない種類の人間にとって、捨てたひとつの光が
中山作品の中にある。



疲れた ★★★★☆
中山可穂という方の書く話の中身は、正直言っていつも同じような内容です。
国外に旅行し、必ず相手が同ジェンダー。
文章能力も、気取っている割には然程レベルが高いとは言えません。
女性作家でしたら現在本屋で平積みにされている方よりはうまいかな、という程度です。
出てくる男性の観念は、女尊男卑とでも言えばいいのでしょうか。
固定観念をひっくり返すためにわざとらしくしているのか、それとも男性に何かトラウマでもあるのか。わざとらしいほどに恐ろしく憎憎しく描かれています。
本当であれば個人的には思想も何もかもが気に入らない。歌詠みだとか作家だとかピアニストだとか、そんな絵になるような主人公ばかりですし。
左の色も強すぎる。とか挙げればきりがないのですが。
それでも「読ませる」力が本からひしひしと伝わってきます。激しい程の情熱を持って書いていらっしゃるのでしょうか。
痛々しいほどの生々しい愛を書いている所為なのか。(大分私小説も混ざっているようですし
読み終わって第一感想はソファに寄りかかり「疲れた……」でした。
しかしここまでバイタリティのある恋愛小説を見失っている昨今。悔しいけれどすごくおもしろい。
こんな激しい愛し方もあるのだなと思いました。あとはシナリオの甘さをキャラに押し付けるのではなく、きちんと練れれば。
ストーリーだけで評価するのならば、星2つがいいところです。
マイノリティーの話 ★★★★☆
中山可穂さんの小説は、初めて読むのではっきり言って期待していなかったですが、以外や以外面白かったです。

マラケシュというのは、地名でモロッコのカサブランカのちょっと南にある町みたいです。

ぶっちゃければ女性同士の恋愛小説なので、それが受け入れられない人は読むのは無理でしょう・・・

また、展開は非常にスピーディ。早い展開の中で衝撃的な場面が次々と現れる。読むというよりはページを繰るという感じになってきました。
最後の、そして最愛の恋人よ ★★★★★
美しい友のままでいられれば、あの人との関係は切れずにすんだのだろうか。ヒロインである泉の差し出した道徳律は、私が抱えている後悔を再燃させた。恋がいつか終わるものなら、なんで友に踏みとどまらなかったのか。そんな後悔を持つ人は、泉の提案に頷くだろう。
しかし、私は主人公絢彦の気持ちに寄り添う。好きな人の心だけでは満たされない。体だけではもっと満たされない。心も体も切り離さずに愛したい。しかし、たった一つの出会いの後は、死ぬ瞬間まで私はその人に満たされているのだ。
作者の描く思いつめるような恋愛にシンパシーを感じ、生の喜びと性の歓びに憧れを抱く。負けてしまった恋でも、相手が生きているだけで自分の生を励ましてくれる人がいる幸せを思う。
この終わり方がよかったと思った。ほっと一息、ため息のように息を吐く。しばらく本が読めなくなったほど、緊張感にあふれる恋愛小説だった。三十路に入ってから読む本だ。
心中は凡人には及ばぬ領域。そんな恋は恐ろしくてできやしない。小説で味わうだけで十分だ。私は凡人のまま、寄り添う恋を、生き抜く愛を、祈っていたいものだ。
マラケシュという名の世界の果てで。 ★★★★★
中山氏の作品を読むといつも回りの空気がすっと薄くなる気がする。息苦しくなる。
同性愛の苦しさも勿論あるが、ひとりの人を愛する過程でのなりふり構わない姿がそう感じさせるのか。
「溢れ出る情熱」を通り越し、「溢れ過ぎ行き場の無い情熱」と言った方がしっくりくるかもしれない。
まさに全身全霊でひとりの人を愛し時に残酷なまでに欲する。(この人の作品の前では「愛」と言う言葉を使うことすら何故か陳腐に感じてしまう)
「本当に欲しいものでなければ何も手に入れたくはない」本文より。
とても印象深い一文であると供にこの作品を如実に表している一文だと思う。