「おれの目、片方しかないけど、ちゃんと、何でも見えるんだ」
★★★★★
「おれの目、片方しかないけど、ちゃんと、何でも見えるんだ」。海の方の子の登場人物の哲夫君のセリフです。高校の国語の授業で「海の方の子」を読んだ時に、このセリフに鳥肌がたちました。僕も哲夫君と同じく目が義眼だからでしょうかね・・・。僕の場合は両目が義眼ですけれど。僕の中ではとても心に残った一言です。作品の感想じゃなくてすみませんでした(>_<)。哲夫君みたいに強く生きたいなぁ・・・。
女の子、だね!
★★★★☆
一つ一つはたわいない子供子供した事件、取るに足りない日常的些事を、山田文学は実に丁寧に繊細にいとおしみながら語り、描きます。女の子、というものを知るには格好の小説だし、非情に文学的、ですね。男には真似できないし近寄れない、そういう世界です。重松清『小学5年生』と近い時期に読んだせいか、好対照(双璧)という感じがします。
いとおしいノスタルジー
★★★★★
十代半ばに読んだ時はいまひとつピンとこなかったのだが、今読むと、なんと一編一編がリリカルでいとおしい作品であることだろう、と思う。
ピンとはこなかったものの、あの頃一度読んで、強烈に印象に残っている一編が『桔梗』である。
幼い少女が豊かな自然に囲まれながら覗き見た、男と女の危うく脆い有様。恐怖を孕んだ、死という事象。桔梗の色である、どっちつかずで中間的な紫という色、それゆえの妖艶さ。これらを見、感じ、体験した少女の受け止めた、「世界」という漠然としたものの、なんという広大さよ。それを感じることによってもたらされる感傷は、幸せというものに他ならない。
自然に触れながらあらゆる物事を知り、何かを感じ取っていくことの悦びは、人間として生まれた者にのみ与えられる恩恵だろう。『桔梗』のみならず、どの一編にも、著者はその恩恵にいとおしさと感謝の念を抱いているのが表れている。
本書の裏表紙には、「永遠の少女詠美」とある。とかくアダルトな作風が有名な山田氏だが、本書に込められているような愛らしさを密かに胸の内に保ち続けていられる彼女に、私は憧れる。
せつないノスタルジー
★★★★★
なんでしょうね…久しぶりに読み返しました。中学、高校、大学と、そして今も心のバイブル山田詠美さんの著書。
静かに、音楽がやさしく室内に鳴り響くように、そして時に鋭く、痛いくらいに率直に私に語りかける物語。山田さんが小さい頃から見てきた物事を、きれいにきれいに、細かく織り込んでいます。
筆者の物事を見る目はふつうの人より温度が低いような気がします。それは単に醒めている、という意味ではなくて、とにかく冷徹に観察者たるのです。さまざまな種類の人間を観察し、分類し、好きなものとそうではないものに分ける、時には自分の感情さえも地図のように広げて、分析してみる。「あ、ここにひどい自意識があるぞ」というように。私たちは普段は自分のそれに気づきません。それに目を向けようとはしません。けれど、山田さんの現実の観察記録断片のようなこの小説に、きっと、気づかされるのだと思うんです。人や自分の汚さや愚かさ、そしてその美しさに。
私はこの小説がすごく好きです。特に作者の描く、「こまっしゃくれた」女の子の、幼い自意識の様子に、非常に共感します。そしてそれと対照的に置かれた、自分に忠実で、自意識に振り回されない人たち(例えば「海の方の子」の哲夫くん、「花火」の姉など)が、羨ましくて、とても素敵で、できた人たちだなぁ、と思うのです。
だれもの心の地図に、1つはきっと呼応する素敵な短編集。すごくおすすめです。
短編小説集の傑作!!
★★★★★
『ひよこの眼』は、私が中学生の頃授業で読んだ覚えがあり懐かしく感じます。最近、『晩年の子供』を書店であまり見かけなくなり、残念です。
星の貝殻
★★★★★
小さい頃教科書で読んだ『ひよこの眼』がどうしても忘れられなくて読んだ作品。他の作品もとても面白かったです。
頭のいい書店
★★★★★
ひよこの眼と堤防がすっごく好き。こんな素敵な話を書ける詠美さんは素敵なヒトだ。
KURO-BOOK
★★★★★
まわりのお友達より精神的な部分がとっても成長している少女たち。8話それぞれにオーラ、色彩が美しくあふれ出てます。心のよりどころ的な、ずっと持ってたい一冊!
きよこの本屋
★★★☆☆
山田詠美は子供の率直な視点を借りて、誰も口にしない大人の世の中の暗黙の了解の不条理さ、みたいなものをはばかることなく白昼のものにしてしまった。
とくに、それを強く感じたのは、「迷子」。
隣の家に突然やってきた赤ちゃん。大人はみんな「赤ちゃんが産まれた」というが、それが嘘だって私は知っている。
そして、ある日、私はお隣のおばさんがその子に向かって話しかけているのを見てしまう。
「いつでも好きなだけお菓子をあげるからね。だって、うちの子じゃないもんねえ。」
気まぐれ☆くみくみ。書房
★★★★☆
子供が持つ独特の「不安」や「死」についてとても良く表現されていると思います。彼女の作品は、文章の流れも素敵だと思います。
ma librairie
★★★★★
これも繰り返し読む本の一つ。図書館で借りたけれども、自分の手元においておきたくて購入。『ひよこの眼』は高校3年の時の現代文の教科書にも載っていました。どれも好きだけど、『花火』がお気に入り。山田詠美さんの本は私に新たな考えを与えてくれます。とても新鮮。
書店イギリス海岸
★★★☆☆
「子供から大人に変化する前に一度子供としての自分を完成し、早熟な子は大人になることよりも死を思う子もいます。そのような瞬間ものすごい透明度をもちます」どこかで出会った一節です。誰しも遠い昔どこかで晩年の子供であったのかもしれません。
なないろの本棚
★★★★★
昨夜、読了。山田詠美の本には引力が働いているように思う。この作品も然り。わたしはこの人の描く子供が本当に好きです。
Affinity
★★★★★
子供であるが故の純粋な思い。素直で正直なそれは、それは時に残酷で。けれど、大人の都合、世間の流れによって大きな傷を負う。
「懐古」その気持ちがとても新鮮に、そしてリアルに感じられる一冊。
ままの本屋さん
★★★☆☆
子供であるが故の純粋な思い。素直で正直なそれは、それは時に残酷で。けれど、大人の都合、世間の流れによって大きな傷を負う。「懐古」その気持ちがとても新鮮に、そしてリアルに感じられる一冊。
すばるの本屋
★★★☆☆
山田詠美の作品にはいつも、共感できる部分がある。自分と同年齢の山田詠美がいるとしたら、精神的にもずっと上を行っているんだろうな、という気さえする。ただ、自分はこういう小説はミステリーと同じくらい好きだ。
★ぴろりんの『気まぐれ書店』★
★★★★☆
個人的に大好きな本です!
これを読むと『あ~私っていつのまにか大人になっちゃったんだなぁ…』なんて思ってしまいます。
とても懐かしい気持ちになるお話たちです。
ω幸福論ω
★★★★☆
ひよこの眼が大好きです。なんだか子供の頃の小さな痛みがこみ上げてきます。
きつつき屋
★★★★☆
子供が晩年を迎える!?どういうことかと首をかしげていましたが、読み進むうちに納得。子供であろうと、死期を悟ってしまうと【晩年】を迎えることができるんですよね。このことが随分印象に残りました。短篇集です。
君の見た空 僕の見た青
★★★★☆
恋愛小説というのからははずれてしまいますが、代咲の一押しの作品です。こどもの頃小さなことが大事件に思えたり、ちょっとしたことに危機感を覚えたりした、そんな懐かしい気持ちを思い出させてくれる本です。
ぱんだ館
★★★★★
私も、小学生の頃には『死』について考えた時期があります。タイトルも設定もとてもgoodで、ちょっと笑えます。
閑古鳥
★★★★☆
読み応えあり!です。
スルスルと読めちゃいますよ。