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ドリアン・グレイの肖像 (新潮文庫)

価格: ¥680
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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顔は絵に預け、精神は他人に預け、自分がどこにもない主人公 ★★★★★
 もしも自らの行いが顔に出なければ、人はどう生きるだろう。
これは、ネット上で匿名なら何を言っても構わない、という現代の風潮に答えの一部があるのかも知れない。

 顔、というのは、人生の履歴書である。人は自分の顔に責任を持っている。
それが人の目に触れなくなり、自分の人生に責任を果たす義務が無くなったと知るや、主人公は自堕落な日々を送る。

 着眼点は面白いし、話も予想範囲内で収まるのだが、やはり不快。
まず、主人公の青年。空っぽの頭に吹き込まれた他人の思想の中だけで行動している。
全てを画家と紳士のせいにして、自分の心中でさえ決して我が身を裁きの場に置かない。

 老いることを醜く愚かになるだけと捉えるところがまず理解できない。よほど周囲の老人に恵まれなかったのだろう。

 顔に人格が現れなくとも、離れていく、或いは破滅していく友人たち。
青年はそれらに共感も同情もしない。紳士には共感しているつもりだが、自分が紳士の粗悪なコピーだと気付いていない。
紳士が送りたかった人生を歩まされていることに無自覚な、哀れな操り人形。
自分の顔を放棄した時から、自分の人生を放棄していることが最期まで理解できない。
紳士の想像を超えた唯一の点が、犯罪なのがまた情けない。その紳士は決して自分の手を汚さず高みの見物に徹している。

 それでも文章は美しい。貴婦人の唇と歯を果実とその種に喩える一文など特に。
紳士の徹底した常識への逆説はビアスの「悪魔の辞典」からユーモアを差し引いたのようなもので、読まされる。

 こんなに底の浅い主人公は滅多にいない。そしてその浅さが自分にないかと振り返るとき、薄ら寒くなるのだ。
ヘンリー卿ひとりで ★★★★☆
 ヘンリー卿の放つ言葉は、僕の中の常識とか、偏見とか、その他のつまらない
もののすきまを通り抜けて心のそこあたりに落ち着いた。デカダン、とか、快楽
主義とかそのような言葉で何かをまとめ、縛り付けるのはとても危険だと思う。
危険だというか、個人的には気に入らない。皮肉とか、逆説とかそんなんもんでもなく。

 物語についてだけど、僕がすごっく気になったのは、ドリアンが全然魅力的じゃない
ってこと。ドリアンの会話はあんまおもしろくない。というか、会話の面白さ、機知の
多さもすべてヘンリー卿に集約されている気がする。んなわけで、ヘンリー卿が登場する
シーンは尚際立つ。オスカーの策略なのかも。でも、現代を見ている限り失敗。
オスカーが思うように時代は動いていない。(オスカーについては全然知らんから、ヘン
リー卿のがきっと適切。でも、本音はヘンリー卿の口から出してるとおもう。他のオスカ
ーの作品もどうも彼が本気で書いているようには思えなかった。お金のために書いたんだ。
あれは。きっと。)
”時代を動かすのは人格”なわけだからしょうがないと思うけど。退屈な退屈な。
本は面白かったです。いや面白いのは小説なのが問題だ。
「悲しみは見せかけ、心と顔は別物」 ★★★★★
 友人バジルによって仕立てられた一枚の肖像画、そこに湛えられた限りなき美によって
己に潜む果てなき崇高を知るところとなった主人公ドリアン。
 かぐわしき青年と肖像画の間に取り結ばれた奇妙な契約関係、いかなる罪を重ねども、
年月を経れども、彼の穢れと老いはすべて絵画によって引き受けられ、男は不滅の美貌を
表現し続けることとなる。この関係、すべて世に産み落とされた罪人と無辜の神の子イエスの
それに似る。
 しかし、人間にとって美はあまりに過酷なもの、その重みを前にしてついにドリアンは…

 芸術の気品に比して人間存在の耐えがたき軽さを諭すかのように、登場人物が過剰に淡白に
命を失する物語の展開もさることながら、この小説においてあまりに圧倒的なのは、序文に
はじまり細部に至るまで、これでもか、と繰り出されるアフォリズムの数々。プロットなど
はるか後景に追いやられ、ワイルドのモノローグが濃密に畳みかけてくるそのさまには、
もはや述べるべきことばを失う。
 この小説に見出されるべき壮絶なる文学史の系譜、例えばダンテ、ヘルダーリン、ゲーテ、
ノヴァーリス、無論文中に組み込まれたシェイクスピアも。あるいは、三島の『金閣寺』や
ドストエフスキーなどが連想されることもあろうか。
 翻訳はややもすると生硬、しかしそのような点をはるかに凌駕して、偉大なるロマン主義の
王道を邁進する疾風怒濤の傑作。
あなたも堕ちてみませんか? ★★★★★
音楽・映画・文学などあらゆるジャンル、新旧を問わず、最も影響を受けた作品の一つだと思います。この小説はなんといってもヘンリー卿(オスカー・ワイルドそのもの)の存在感が強烈です(登場していないシーンでも存在感を放っているほど・・・)。彼は現代に生まれていたらほぼニート扱いで、まったく相手にされないような口達者なだけの男かもしれないですが、作中では歩く金言集といえるほど、不道徳でブラック・ユーモアたっぷりの名言を連発し、やがては絶世の美男子ドリアンを破滅させます。『「美」は「天才」の一形式である・・むしろ「天才」より説明を必要としないのだからより高次なものである』とかドリアンにのたまうわけです。実際的で合理的なことを嫌い、道徳心などかけらもなく、さらにはニヒリストで、ただただ頽廃的美学に身を任せることを愛する人に最適の本。
デカダンス ★★★★★
唯美主義とヒューマニズムの葛藤を軸に、誘惑的に描かれている。
読んでみて率直に感じたのは、快楽主義やデカダンス自体が罪なのではなく、その行為によって誰かを傷つけることが罪なのだということ。
そういう意味でも、シビル・ヴェインの場面が切なかった。芸術か?恋か?
読みやすく、それでも深く、様々な要素が入っていて面白い。