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熊を放つ〈上〉 (中公文庫)

価格: ¥864
カテゴリ: 文庫
ブランド: 中央公論社
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荒削りだけど、パワフル ★★★☆☆
本作品は、著者のデビュー作だが、後の著者の作品群に比べると、非常に荒削りな印象を受ける。
反面、著者らしい、作品にかける情熱をひしひしと感じ、それがパワフルであって、惹き付けられる。

二人の青年が、一台のバイクを手に入れ、旅に出る。
うち一人は死んでしまうが、ノートを残す。
そして、もう一人が、故人の計画を引き継いで、動物園の動物を放ってしまう。

何だか、物語としての整合性が希薄だし、ノートの部分の記述は、欧州の近代史を知らなければ、理解しにくく、
この部分は、非常に緩慢な印象を受けてしまい、あまり楽しくなかった。

ところが、動物を放ってしまう下りに入ると、たたみかける様な展開で、作品の持つパワーを感じる。
全体として、理解に苦しむ部分も少なくないが、じっくりと読んでみると、非常に味わい深い。

作品全体の完成度の問題があり、著者の意図を、ダイレクトには汲み上げにくい。
そこを、汲み上げようと努力して読めば、大変味のある作品だ。

ただ、星の数程ある小説作品の中で、何故、努力をしてまで、本作品を詳読して理解する必要があるのか?
それは、著者が後に、数々の素晴らしい作品を発表し続け、それらのエッセンスと通じるものがあるからだ。

少なくとも、著者の優れた作品群のうち、最初に読む作品ではない。

スプラッタホラー ★★★★★
著者「ジョン・アーヴィング」の別名を貴殿はご存知だろうか。
「ミスタ・ゾンヴィング」である。
かれはもっぱらゾンビ小説を書き殴ったことで有名である。
もっとも、日本では有名ではないが。
ゾンビ小説の第一人者「村上春樹」が最高の翻訳でおくる比類なき大傑作!
本書を購入し、恐怖に震える夜を過ごしたまえ。
それでも5 ★★★★★
アーヴィングのデビュー長編である。確かに荒削りで冗長な展開である。
しかし、最初から最後まで登場人物・作者共に良くも悪くも若さ溢れる小説でもある。
自分が年を重ねたせいもあるのかもしれないが、グラフとガレンがとても羨ましく思えた。
エルンストも含めて幸せに生き残って欲しい。彼らにはその責任がある。
好きな作品なんですが・・。 ★★★★☆
ファンには物足りないということでしょうか?全体的に評価は低いようですが、個人的には好きな作品です。
荒削り、冗長、どちらも当てはまる部分もありますが、アーヴィングの原石、とでも表現したい魅力がそこかしこに散らばっています。アーヴィングファンなら読んで損はないです。

お話は三部構成。
落ちこぼれ学生のグラフが、破天荒なジギーと出会い、気ままなバイク旅行に出かけます。ジギーのとんでもなさにちょっと付き合いきれなくなったあたりで、突然彼がこの世を去ってしまうまでが第一部。

第二部はジギーの残したノートの記録。主旨のよくわからない動物園偵察の様子と、ジギーの家族の歴史が交互に語られます。
正直、かなり冗長です。初めて読んだ時は斜め読みしてしまいましたが、読み返すうち、この章が一番噛み応えがあると思うようになりました。

ジギーの家族は、戦争とその後の時代に一人また一人と奇妙な消え方をしていき、最後に幼いジギーと同居人エルンストだけが残されます。
彼らが体現しているのは「生き残るということ」。この、後のアーヴィング作品でも繰り返し取り上げられるテーマが、この物語でもキーワードとなっています。

第三章ではグラフが、ジギーが計画し果たせなかった動物園開放を決行します。ところが世間は想像以上に厳しく、自由になった動物たちは・・。
荒っぽい落ちですが、そこはアーヴィング。ネガティブな終わり方ではないです。

原著、邦訳共に読みましたが、村上春樹氏の訳は原文をよく活かしていて、それでいて春樹流で読みやすく、うまいものだなと感心しました。
決してつまらなくない ★★★★☆
 最初の頃は友達ふたりがバイクであちこち放浪して、青春ロードノベルみたいな感じですか、軽妙な語り口も魅力で、なんてたって村上春樹訳。しかも世界のアーヴィング。
 しかし、しかしながら、上巻の後半からはマズイ、と個人的に思うのだが、どうだろう。第二部のノートブックのところなんだが。何故ぐだぐだと友達の両親の話をしているんだ? 彼のバイク好きなど、重要な背景になるらしいのはよくわかるけれども、あまりにも冗長すぎ、果たして、第二次世界大戦のオーストリア、ドイツあたりの抗争を巻き込んでしまったのが正解なのかどうか。