ハフリンガー
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この実用一点張りを絵に描いたような小さな四駆は各国のジープタイプ四駆が出揃っていた1960年代に開発されました。そしてオリジナル・ジープよりもはるかに小さく軽い四駆でエンジンの排気量もたったの643ccでしかありません。ところが性能や用途というものが劣っているわけではなくジープが目指した4人が乗れて手荷物も運ぶことが出来るしオフロードでの走破性も遜色ない。要するにジープタイプの四駆よりも進化した四駆なのです。もともとジープは1940年代としてもコストを下げるために当時の自動車技術に照らしても最先端とは言えないものでした。それもコストと生産台数という性能が発揮できる方向でしたがハフリンガー、そしてピンツガウアは全く独自の方向性で開発されました。それは既刊「アルペンワーゲンの系譜」で書いたように1920年代のタトラ以降続いてきた方向性でした。
本書の内容で主なものは終刊した四駆専門季刊誌CCVに執筆したものを最小限の加筆修正したものです。日本の林野庁に納入された数百台の生き残りである700APの試乗記と車体細部の説明はCCV-11号からです。同様に英国人によるハフリンガーの歴史についても同号に掲載されたものです。主要諸元表は新たに書き直して700AP/703APを併記しました。軍用モデルの試乗記と民間型703APの記事は香港にて取材したものでCCV-67に掲載したものです。これには分解整備時の画像も含まれます。CCV-11、67をお持ちの場合は内容が重複しますがどちらも絶版となっています。写真・図版には新しいものもあり追加した情報も含まれています。文字数は主要諸元表も含めて約24,100文字、写真は歴史的なものとメカニズムを説明するための図版を含めて多くあり約100点です。本書は4冊同時に編集を進めてきたタトラ、ハフリンガーそしてピンツガウアー(空冷・水冷)の中の1冊です。
CCV(クロスカントリービークル)関連の電子書籍は主にメカニズムがユニークなオフロード四駆について解説した資料性のある本と車全般についてのエッセイに類する本です。いずれもベースとなっているのは1990年から2008年にかけて出版された四輪駆動専門季刊誌CCVです。四駆の愛好家と言っても様々ですが私が興味があるのは機能を重視している反面装飾性の少ない四駆です。よって、あまり車の構造やオフロード走行に関心が無い方には偏った内容で面白くないかも知れません。amazon.co.jpで「石川雄一」を検索し著者ページをご覧になってください。あるいはWikipediaにも「CCV」という項目がありますので検索してみてください。 CCVは1冊1800~2000円という価格でしたが自動車専門誌としては異例にも広告掲載料に依存しない内容でした。ですから内容は正確であり実際にオフロードで走らせての内容でしたので読者さんには支持されました。筆者はもともと物書きなどではなく機械好き・オフロード好きから間違って出版・執筆を始めてしまい、それを30年以上やって来ました。内容は正確だと自負していますが美文を書くのは極めて不得意です。また自分の考えを通すために商売としての出版は下手でしたのでアチコチに気を遣った内容にはなっていません。本来正しい事を伝えるべき出版が拝金主義やビジュアル優先で歪んでしまうのは根本的に間違いだと思っています。
電子化では本の体裁もいろいろと試しましたが電子書籍では読者さんが読むのに使う機材がスマートフォンからタブレットPCと様々なので凝ったレイアウトをやっても無駄だと判断して文章と画像を並べただけのプレーンなものにしました。表紙も店頭で目立たせる必要も無いのでこれでいいかと思います。文字や写真も拡大・縮小が可能なフォーマットにはしてあります。
CCVのバックナンバーは弊社で在庫して通信販売を行っています。しかしCCV15以前は絶版ですし残っている号も少なくなっています。 弊社の在庫に対してのお問い合わせの多くは特定の四駆にご興味があって、その記事を求められる方です。専門誌1冊丸々が欲しいのではなく1件の記事だけの需要です。しかし、その記事だけをコピーして郵送することは版元であった大日本絵画さんの著作権の侵害になります。そこで記事を電子化しながら再編集してご提供させていただこうと思いました。過去の記事がベースのものは文章を現時点に合うように最小限の書き換えも行っています。写真もオリジナルがフィルムであったものをデジタル化したものもありますがCCVの記事ではモノクロだったものがカラーになっているものもあります。ということで私たちのように狭小な分野の情報を頒布させていただくには電子化しか方法はありません。このことから価格は低めに設定しています。ご興味を持たれた方はどうぞお読みください。また紹介する四駆の中には古いもの、軍用などで一般的ではないものもあり日本ではあまり知られていないものもあります。そのような紙の出版では扱われる可能性の低い車両についての情報を廉価かつ継続的に提供するのはこの分野の車両の産業機械としての文化を将来に向けて継承させるために意義あることではないかと思っています。