アルペンワーゲンの系譜: タトラからピンツガウアまで クロスカントリービークル
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自動車の歴史を辿ると過去には様々な設計思想がありユニークな車が多くありました。しかし大衆化して商品として大量に売られて行くにつれて個性的な内容の車は減ってしまい見た目のスタイルとかペンキの色などでユーザーに媚を売るようになってしまった。それは量販乗用車のみならず機能が優先されるべきオフロードカーに於いても見られます。そのほぼ唯一の例外がこの書で紹介する一連の車です。90年にも渡って信念とも見えるように揺るぎない設計思想を通して作られて来ています。しかも遊戯に供するような車ではなく業務に使われる車としてやって来たのは実に稀有なことだと思います。内容としても書きましたが機械として実直に作ったものに対してそれを評価出来るユーザーも少ないながらもいるのは素晴らしいことです。しかもスタイルの美しさなども機能美として自然と備わるものです。
タトラというチェコのメーカーはあまり知られていませんが四駆に興味ある方ならハフリンガーとピンツガウアなら知っていると思います。タトラは1920年代から独特の構造でオフロードカーを作っていてそれがオフロード四駆として究極のシャーシーを持つピンツガウアーの源流なのです。車種にしても生産数にしても圧倒的多数のジープタイプ四駆に比べれば数の上では1%にも満たないこの一連の四駆ですがその設計思想と性能は他を圧倒しています。これに続いてハフリンガーとピンツガウアについての3冊を出版しますがピンツガウアがウニモグや他のキャブオーバー型四駆とは全く違うものであることを理解していただくためにもピンツガウアが開発された背景にある長い歴史について一冊にまとめてみました。ただですら日本では知名度の低いタトラの更にオフローダーとなると情報も少なく資料として電子化して残すべきだと思って編集しました。
本書の内容でタトラT11については新たに書きましたが他は終刊した四駆専門季刊誌CCVに執筆したものを最小限の加筆修正したものが中心です。ハフリンガーとピンツガウアについてはカーグラフィックのハイグレード誌として存在したSuper CG(絶版)に執筆したものです。それらの専門誌をお持ちの場合は内容が重複します。写真・図版には新しいものもあり追加した情報も含まれています。文字数は主要諸元表も含めて約31,500文字、写真は歴史的なものが中心ですがT11の細部を含めて実車を撮影したものも多くあり図版も含めて約90点です。
CCV(クロスカントリービークル)関連の電子書籍は主にメカニズムがユニークなオフロード四駆について解説した資料性のある本と車全般についてのエッセイに類する本です。いずれもベースとなっているのは1990年から2008年にかけて出版された四輪駆動専門季刊誌CCVです。四駆の愛好家と言っても様々ですが私が興味があるのは機能を重視している反面装飾性の少ない四駆です。よって、あまり車の構造やオフロード走行に関心が無い方には偏った内容で面白くないかも知れません。amazon.co.jpで「石川雄一」を検索し著者ページをご覧になってください。あるいはWikipediaにも「CCV」という項目がありますので検索してみてください。 CCVは1冊1800~2000円という価格でしたが自動車専門誌としては異例にも広告掲載料に依存しない内容でした。ですから内容は正確であり実際にオフロードで走らせての内容でしたので読者さんには支持されました。筆者はもともと物書きなどではなく機械好き・オフロード好きから間違って出版・執筆を始めてしまい、それを30年以上やって来ました。内容は正確だと自負していますが美文を書くのは極めて不得意です。また自分の考えを通すために商売としての出版は下手でしたのでアチコチに気を遣った内容にはなっていません。本来正しい事を伝えるべき出版が拝金主義やビジュアル優先で歪んでしまうのは根本的に間違いだと思っています。
電子化では本の体裁もいろいろと試しましたが電子書籍では読者さんが読むのに使う機材がスマートフォンからタブレットPCと様々なので凝ったレイアウトをやっても無駄だと判断して文章と画像を並べただけのプレーンなものにしました。表紙も店頭で目立たせる必要も無いのでこれでいいかと思います。文字や写真も拡大・縮小が可能なフォーマットにはしてあります。
CCVのバックナンバーは弊社で在庫して通信販売を行っています。しかしCCV15以前は絶版ですし残っている号も少なくなっています。 弊社の在庫に対してのお問い合わせの多くは特定の四駆にご興味があって、その記事を求められる方です。専門誌1冊丸々が欲しいのではなく1件の記事だけの需要です。しかし、その記事だけをコピーして郵送することは版元であった大日本絵画さんの著作権の侵害になります。そこで記事を電子化しながら再編集してご提供させていただこうと思いました。過去の記事がベースのものは文章を現時点に合うように最小限の書き換えも行っています。写真もオリジナルがフィルムであったものをデジタル化したものもありますがCCVの記事ではモノクロだったものがカラーになっているものもあります。ということで私たちのように狭小な分野の情報を頒布させていただくには電子化しか方法はありません。このことから価格は低めに設定しています。ご興味を持たれた方はどうぞお読みください。また紹介する四駆の中には古いもの、軍用などで一般的ではないものもあり日本ではあまり知られていないものもあります。そのような紙の出版では扱われる可能性の低い車両についての情報を廉価かつ継続的に提供するのはこの分野の車両の産業機械としての文化を将来に向けて継承させるために意義あることではないかと思っています。