ピンツガウアー 空冷モデル
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ピンツガウアは1960年代に開発が始まり現在もシャーシーの基本的な変更なく生産されている高性能・高品質なオフロード車です。主に軍用車として納入するためにより小型なハフリンガーに次いで開発・生産されました。しかしエンジンや車体が大きくなっただけではありません。ハフリンガーではサイズとコストの面で省かれていたタトラ伝統のデファレンシャルと完全なスイングアクスルが盛り込まれました。これについては「アルペンワーゲンの系譜」で書いたように1920年代のタトラ以降続いてきた技術が正しく継承されています。ピンツガウアーに比べれば他のオフロード四駆はなんとも凡庸なものに見えます。車の構造に詳しい人ほど常識を覆させられるものです。とりたててオフロード車に興味はなくても自動車工学に対しての好奇心のある方にも価値ある本です。
本書の内容で主なものは終刊した四駆専門季刊誌CCVに執筆したものを最小限の加筆修正を行ったものです。四駆で幌の710Mについては筆者が所有する車体を走らせてCCV-38にて掲載した試乗記です。それに続く主要諸元表は新たに書き直して710/712を併記しました。そして710を中心とした構造の説明では整備中の空冷エンジンの単体写真も含まれます。タトラとピンツガウア特有のツインクラウン・デファレンシャルについてはイラストを用いて平易に説明してあります。六駆で幌の712Mの試乗記はCCV-53で掲載したもので712のリアサスペンションについて説明しました。六駆で箱車の712Kの試乗記はCCV-21で掲載したもので構造の説明は重複するので省きました。世界でも珍しいと思われる新車同様の710Kの試乗記は1987年に著者が編集長として試乗し4x4マガジンに掲載されたもので、写真は死蔵状態から目覚めたところを2014年に再会した時のものです。もう一つの文章は軍用車としてのピンツガウアをアーマーモデリング誌に執筆したものです。よって、これらの専門誌をお持ちの場合は内容の一部が重複いたしますのでご了承下さい。写真・図版には新しいものもあり追加した情報も含まれています。文字数は主要諸元表も含めて約41,500文字、写真は試乗したピンツガウアの走行場面などの他に世界各地で撮影されたもの、カタログ2点そしてメカニズムを説明するための図版を含めて多くあり約115点ですが複合したものもあり実数は140点くらいです。。
写真・資料が豊富にあるので前期の空冷4気筒エンジンのモデルについてまとめました。後期のターボディーゼルモデルについては別に出版いたします。本書は4冊同時に編集を進めてきたタトラ、ハフリンガーそしてピンツガウアー(空冷・ディーゼル)の中の1冊です。
CCV(クロスカントリービークル)関連の電子書籍は主にメカニズムがユニークなオフロード四駆について解説した資料性のある本と車全般についてのエッセイに類する本です。いずれもベースとなっているのは1990年から2008年にかけて出版された四輪駆動専門季刊誌CCVです。四駆の愛好家と言っても様々ですが私が興味があるのは機能を重視している反面装飾性の少ない四駆です。よって、あまり車の構造やオフロード走行に関心が無い方には偏った内容で面白くないかも知れません。amazon.co.jpで「石川雄一」を検索し著者ページをご覧になってください。あるいはWikipediaにも「CCV」という項目がありますので検索してみてください。 CCVは1冊1800~2000円という価格でしたが自動車専門誌としては異例にも広告掲載料に依存しない姿勢でした。ですから内容は正確であり実際にオフロードで走らせての内容でしたので読者さんには支持されました。筆者はもともと物書きなどではなく機械好き・オフロード好きから間違って出版・執筆を始めてしまい、それを30年以上やって来ました。内容は正確だと自負していますが美文を書くのは極めて不得意です。また自分の考えを通すために商売としての出版は下手でしたのでアチコチに気を遣った内容にはなっていません。本来正しい事を伝えるべき出版が拝金主義やビジュアル優先で歪んでしまうのは根本的に間違いだと思っています。
電子化では本の体裁もいろいろと試しましたが電子書籍では読者さんが読むのに使う機材がスマートフォンからタブレットPCと様々なので凝ったレイアウトをやっても無駄だと判断して文章と画像を並べただけのプレーンなものにしました。表紙も店頭で目立たせる必要も無いのでこれでいいかと思います。文字や写真も拡大・縮小が可能なフォーマットにはしてあります。
CCVのバックナンバーは弊社で在庫して通信販売を行っています。しかしCCV15以前は絶版ですし残っている号も少なくなっています。 弊社の在庫に対してのお問い合わせの多くは特定の四駆にご興味があって、その記事を求められる方です。専門誌1冊丸々が欲しいのではなく1件の記事だけの需要です。しかし、その記事だけをコピーして郵送することは版元であった大日本絵画さんの著作権の侵害になります。そこで記事を電子化しながら再編集してご提供させていただこうと思いました。過去の記事がベースのものは文章を現時点に合うように最小限の書き換えも行っています。写真もオリジナルがフィルムであったものをデジタル化したものもありますがCCVの記事ではモノクロだったものがカラーになっているものもあります。ということで私たちのように狭小な分野の情報を頒布させていただくには電子化しか方法はありません。このことから価格は低めに設定しています。ご興味を持たれた方はどうぞお読みください。また紹介する四駆の中には古いもの、軍用などで一般的ではないものもあり日本ではあまり知られていないものもあります。そのような紙の出版では扱われる可能性の低い車両についての情報を廉価かつ継続的に提供するのはこの分野の車両の産業機械としての文化を将来に向けて継承させるために意義あることではないかと思っています。