人生が変わる一冊
★★★★★
これは数ある山本周五郎作品の中でも、もっともお勧めしたい宝物のような一冊だ。
一人の女の成長と苦難の道のり…というような平坦な言葉で表わすにはあまりに傑作すぎる。
胸の中の弱い所を強い力でぎゅっと掴みあげられ、滂沱たる涙でもはや本を見ることができなくなってしまった。
愚鈍な程に人を信じる気持ちは決して愚かな気持ちではない。
そうして遠回りしてようやく気付く事もある。
悩んでいるとき、物事がうまくいかないとき、とにかく読んで欲しい。
本当に人生の変わる一冊と言っても過言ではない。
宝物のような本との出会いに本当に感謝する。
おせんちゃーん!!
★★★★★
山本周五郎さんは、文章が上手ですね。ただ文字が並んでいるだけなのに、まるで江戸時代にタイムスリップしたような気分に浸れます。火事の描写なんか本当に経験したんじゃないかと思ってしまう程リアルです。
物語は、おせんという女性がただただ酷い目に遭う話なんですが、前向きに生きていく。これを読むと優しい気持ちになれますね。
それにしても、幸太は本当にいい男だ。自分もこんな人間になりたい。
私は、『さぶ』より好きですね。
ところで、職場の人が山本周五郎の大ファンで、娘におせんと名づけようと本気で思ったと言ってました。流石に現代で「おせん」はないでしょう・・・
何かを信じて
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柳橋物語、登場人物は庶民で、そのくらしぶりが描かれています。普段のどこにでもありそうなお話です。が、作者の筆は容赦なく心に迫ってきます。刹那、人は決断しています。ハッキリとした意思、意志の表れではないかもしれません。それが原因でつぎからつぎへと結果、課題が現れます。思うようには行きません。仕合せ、生きていく、愛、人について、様々な切り口で考え、味わうことが出来ます。日常のくらし、伴侶に、家族に、友に、感謝の念がこみ上げてきます。場面の描写も素晴らしく、臨場感一杯に味わえます。「むかしも今も」:いい話です。読み進むうちに結末は予測されるのですが、その時の台詞が違いますね。心打たれます。
心の清らかさとは
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「お天道様に顔向けできない生き方をしてはいけないよ」・・・そんな江戸っ子の両親に言われた言葉がリフレインする舞台は下町柳橋。人情、信念、美しい心持、そんな事の大切さを思い起こさせてくれる作品でした。「おう、なかなか泣かせる粋な話じゃねーか」きっと感想も下町風になります。
失われた人情
★★★★☆
主役は美男美女ではない。が、貧しくとも、いや貧しいからこそ人として誠実に生きていこうとする庶民の暮らしが描かれている。最近のいわゆる「ライトノベル」に見られるように欲望のままに肌を重ね、殺し合うような小説ばかり読んでいる世代は、是非とも読むべき一冊。