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父と子 (新潮文庫)

価格: ¥680
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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北の国から:親達から観た「知識人」 ★★★★★
 世代的に、物語戯作の伝統を越えて本格的に近代文学を展開した最初の世代なのではないかと思う。日本でいうと夏目漱石のような存在というか。語り口が非常に饒舌なところに戯作の伝統が見えるが、テーマ自体は当時の新興インテリゲンツァの抱えた社会的なテーマを普遍的に描いてみせている。

 帝政ロシア末期、厳しくも美しい北の国の風土を背景に、農村プチブルの旧世代とニヒリズムにかぶれた学生・新世代の関係が描かれる。この関係には「相克」という言葉がよく使われるのだが、この言葉だとなんか対立して争ってるみたいな印象を抱きがちだ。だが実際のところ、この話で描かれる新しい時代の知識階級である学生達は結局、ロシアの自然(=地)と親の愛(=血)に囲まれた中で突っ張ってるに過ぎず、旧世代に属する周囲の目線はひたすら優しい。そこに時代・土地の違いを超えた普遍的な人間の営みを観たツルゲーネフは、大変温かい視線で登場人物達を見守りながら、叙情的なドラマを組み立てている。

 それ程長くはないボリュームの中に、そんな青年知識人達の過剰な自意識、内面の悩み、恋愛模様、成長、周囲の愛、美しい自然、都市と農村、世代間の反発、親子の愛、といったテーマとドラマがギッシリ詰め込まれている。僕みたいにロシア文学初心者の方でも、例えば漱石三部作が好きな人は是非。
虚無主義者 ★★★★★
 ドストエフスキー,トルストイというとんでもない怪物作家たちが同じ時代にいなければ,もっと知名度もあったであろう著者の傑作.個人的には「初恋」よりも数段好きだ.
 この本の中で描かれる虚無主義者「ニヒリスト」.無意味に冷笑的な態度をとるわけではなく,また己の無知もわからずに全てを批判する否定論者とも異なるニヒリスト.ツルゲーネフの創り出した虚無主義の世界に無意味に厭世的な雰囲気はない.
30年たって・・ ★★★★★
学生のころ読んだ一冊です。「ニヒル」という概念は一種の虚無感とは思いますが、シニカルとも微妙に異なり、悪意は基本的にないものと思います。
古い体質、体制、価値観・・すべてに懐疑的になり、このバザーロフは科学的な分野にのみ生きる道を求めようとするわけですが、意外なほど、彼の精神の中枢には、豪放な父親の素朴な愛情や、迷信にうろうろする可愛い母親の愛情が根を張っているのでしょう。バザーロフの父親のセリフに、「あと20年もすれば、お前たちの術(すべ)も古臭いと言われるようになるさ」という言葉がありましたが、言い得て妙です。私には2人の息子がいますが、特に上の子はドストエフスキーが大好きで、私が30年前に読んでぼろぼろになっている文庫を、後生大事に読んでおりました。世代はめぐり、めぐるものですが、人間の営みというのはある意味で蝸牛の歩みのようであり、改革といったものはこけおどしに過ぎないのかもしれませんし、またそうであってこそ、親は何かを子に語り、子は何かを受け継ぐのかもしれません。30年たち、若さに正直だった頃に比べ、老眼鏡なしでは何一つ読めない情けない体にはなったものの、このような時間の流れを体験できたことに感謝します。農奴ひとりひとりにさえ愛情を掛けて書いているツルゲーネフの筆致は、世代を超えて読み継がれる不朽作品として、最高です。
いつになっても、どこであっても読まれるだろう名作 ★★★★★
 作者が主人公バザーロフを愛していただろうことは「ペパー四等兵」や、クロトポキンの「思い出」からも間違いないと思う。
 にもかかわらず、本作における「父」世代の思想(いわゆる「時代おくれ」な考え)に対しても、作者は暖かい目を向けていたのだろうと私は感じる。そしてこのような世代間の断絶は常にどこでも(もちろん現代の日本でも)起きるのであり、それが時代を経ても読む人に感動を与えるのだと思う。
世代の断絶 ★★★★★
父と子。世代間の断裂。主人公アルカージーと科学のみを信じて、全てを否定するニヒリスト、友人バザーロフ。革命の混乱に先立つ時代、世代間の価値観のズレを描き、伝統を重んじつつもそれを守り続ける親の世代とニヒリストというタイトル(ファッション)でロシア的伝統を全て否定しにかかる子の世代。大学の休暇に帰省するアルカージーと連れバザーロフ、その帰りを心待ちにしていたニコライに訪れるドラマは…