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キリストの誕生 (新潮文庫)

価格: ¥594
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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神は何故イエスを救わなかったのか、遠藤周作的回答 ★★★★★
イエスが十字架にかけられたとき、弟子たちは皆一様にイエスを見捨てて逃亡したのか、
その彼らが.イエスを忘れず、神の子キリストとして信仰するようになったのか。
そして何より『神の愛』があるなら、何故あの時神は沈黙していたのか。

これらの質問に対する、キリスト者遠藤周作の回答が本書である。
なぜ? その根本的な問いかけ。 ★★★★☆
信者ではない日本人にとってキリスト教は
もっとも理解しにくい西洋の巨大な現象のひとつ。

この本は、キリスト者であり小説家である人物が
誠実にその根本問題と向き合って、
必要なことをさらけ出して書いたものであり、
その意味で挑戦の記録。

だから本の扉を開けたところから、
内容は、序であり、破であり、急となる。


第1章は「イエスの死」

無力なただの男として死んでいった人。

「だが聖書の深い問題は、そこから始まる」と著者はいう。


第2章冒頭、
「現代聖書学に忘れがたい足跡を残したルドルフ・ブルトマンは
 イエスの教えと、その後の弟子たちの結成した原始キリスト教団の信仰を
 比べあわせた後、ほぼ、次のような悲観的な結論に達した。
 イエス自身はキリスト教徒ではない」という文から始まる。


「イエスがなぜ惨めな死に方をしなければならなかったか。

 なぜ神も彼を助けず、人びとも彼を見捨てたのか、

 その生涯はイスラエルのためにまったく無意味だったのか」


これらだけではなく、本の中で、
著者は自分にとって避けて通ることのできない
切迫した、根本的な問いを次々にかかげ、
小説家として、自分自身として
もちうるすべてを投入して解答を見つけ出す。


ゴルゴダの丘の処刑でも、ローマ軍によるエルサレム神殿の徹底破壊の時でも、
神は沈黙したままであり、キリストは再臨しなかった。

頭で考えれば、そこから先はなくなり、支持は生まれず、
ましてやキリスト教が興り、衰弱したローマに代わって
西洋全体を支えるシステムになどならなかった。

歴史は違った歩みを、現にたどったことを示している。


『キリストの誕生』では、それらのことがらについても
著者は自らの見解をはっきりと述べる。

240ページの分量だが、揺るぎようのない
一個人という岩盤につきあたった
ずっしりした読書体験。


キリスト者が書いた書物によくある、
キリスト教を無条件に善であり、至高であり、価値あるものだとする記述から
遠く離れた本書は、
キリスト教理解のためには必読の一冊。

西洋の歴史で、イエス誕生の前後についてある程度の知識があり、
キリスト教関連の本を数冊でも読んであると
より刺激的な時間が持てます。
作家の中の「分析vs信仰」のバランスの謎 ★★★★☆
 愛を語ったものの、無力にも磔刑で死んだイエス。土壇場で彼を裏切りながら、残された使徒達が「キリスト復活」を教えの中心に据えなおす心理。また、ユダヤ教の中から発生した原始キリスト教と軋轢を持ちつつ、やはり「キリスト復活」を純粋に理念として受け入れる非ユダヤ人の新しい教徒達。結果的にローマがエルサレムを滅ぼした際に前者の信者が消滅したことが、キリスト教の世界宗教化に拍車をかけたという分析は、説得力があった。

 ・ヤコブ:イエスの血縁者であり、ユダヤ教の戒律を尊重するように説く保守本流
 ・ポーロ(パウロ):ユダヤ教を超えたキリスト教を構想する熱血漢の異邦人
 ・ペテロ:イエスを裏切った後も、ヤコブとポーロの間で苦悩する、弱く優柔不断な男

 新約聖書を丹念に読み込み、このように生き生きと使徒達を描き直しているが、単に作家の想像力とバカにはできないくらいの説得力がある。

 興味深いのは、ここまで客観的に冷めた目でイエスと使徒達、イエスの「キリスト化」に到る信者の心理を捉えながら、それでもなおかつ作者がキリスト教信者であったということである。(この謎はルナンの「イエス伝」を読んだときにも僕は抱いた。)この本の中でこの謎に答えてくれなかったので星は1つ減らしたが、ユダヤ教の知識を補足しつつ原始教団の様子を説明してくれたこの本は、信者でない僕には非常に興味深く読めた。

 キリスト教信者が書いた本だけど、非常に冷めた目でキリスト教信者の心理構造を説明している面白い本だと思う。
難解である。 ★★★★★
これは遠藤のカトリック信仰のしゅうたいせいである。
彼は、キリストの再臨の解釈を、再臨して今横にたってくれている同伴者としてのキリストであると考えています。
これにより、キリストが今生きている私たちに身近なものであること
が理解できます。
確かに反論は多いと思いますが、私は手術で入院時にこの本をもちこんで、ベッドの上で、感動共感した事を覚えています。
その背景には遠藤が結核で手術入院の経験が、大きく影響していると思いました。私は遠藤の著作で、カトリックの洗礼を受けました。
兎に角難解であるが、いい本なのです。2,3回は、読んでみてください。
無力な愛 ★★★★★
この本に先立って書かれた“イエスの生涯”と合わせて読みたい,大変質の高い書でした.信仰を与えられるものとしてではなく自ら開拓し,悩み,挫折し,再び格闘してゆく対象として捉えて生きてこられたのかしらんと,ご存命中一冊を除いてその著作を手にしたことのなかった遠藤氏の信仰生活をふと思いました.小説家でなければ困難な切り口,それでいて妥当性を以て訴えかける解釈.高橋たか子氏の仰る通り,感嘆させられました.信徒の方にはぜひ読んでいただきたい一冊.日頃各々が如何に“奇跡を行うイエス”を要求しているのかをまざまざと見せつけられました.