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スペイン内戦

価格: ¥0
カテゴリ: Kindle版
ブランド: 六角堂出版
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人類よ、人類よ、私はお前に訴える!
アメリカの人々よ、ヨーロッパの人々よ、私は諸君に訴える!
スペインを救え、我々を救え、いや、あなたがたを救え、と。
なぜなら、脅かされているのはあなたがたであり、また、我々でもあるからだ。
  ── ロマン・ロラン『世界の良心に訴う』(1936年)

独裁者アドルフ・ヒトラー率いるナチス・ドイツがカギ十字の旗の下で再軍備を完了し、ヨーロッパ全土が第二次世界大戦の勃発に向かって大きな坂を転がり始めていた1936年7月17日、地中海と大西洋に挟まれた欧州西端の国スペインで、主義主張を異にする二つの勢力による内戦が勃発した。

スペイン内戦 ── この戦争は、単に一共和国の政変にとどまらず、政治的にも軍事的にも、その数年後に勃発する第二次大戦における戦いの様相を決定づける重大な意義を秘めた、世界史的な一大事件でもあった。数年後にヨーロッパ各国の戦場で繰り広げられることになる新戦術と新兵器、とりわけ戦車と航空機を巧みに組み合わせて敵の防衛線を鮮やかに突破するドイツ軍の新戦術「電撃戦」は、事実上スペイン内戦において初めて実戦に投入され、そこでの試行錯誤を通じて磨き上げられたのである。

では、スペイン内戦とはどのような戦いだったのか。

1936年2月に実施された国会選挙で勝利したのは「人民戦線」と呼ばれる、反ファシズムを標榜する左派の統一勢力だったが、選挙結果に危機感を覚えたスペイン国内の貴族や軍人、僧侶、地主らはファシスト勢力を支援して、人民戦線政府への大規模な反抗を開始するようになる。そして、この闘争が五か月後には、スペイン全土を揺るがす内戦へと発展していった。ナショナリストの勝利は、ヒトラーとムッソリーニの心に、自らの軍事力への強烈な自信を植え付ける効果をもたらした。内戦終結から五か月後の1939年9月1日、ヒトラーはスペインでの戦訓によって完成度を高められた新戦術 ── いわゆる電撃戦 ── を武器に、ヨーロッパ全土への侵略を開始することになる。

本書は、第二次大戦の開戦経緯を考える上で重要な意味を持つスペイン内戦の発生原因とその経過を、わかりやすく解説した記事です。2000年8月、学研パブリッシングの雑誌『歴史群像』第43号(2000年夏・秋号)の記事として、B5判9ページで発表されました。また、主題に関連する付録記事として、学研パブリッシングのムック『ソヴィエト赤軍攻防史(II)』に掲載された記事「スペイン内戦とソ連赤軍」も巻末に収録しています。

この内戦は当初、ドイツとイタリアを中心にヨーロッパで勢力を広げつつあったファシズムと、それに対抗する「反ファシズム」との戦いであるとの位置づけがなされたため、自由を圧殺するファシズムへの抵抗という目的意識に燃える多くの知識人を戦場へと駆り立てることになりました。しかし、ドイツやイタリア、ソ連から送られた近代兵器が戦場に投入され始めると、戦いの様相は次第に民兵によるテロやゲリラ戦主体の非正規戦から、組織的な戦術と兵器の性能に依存する正規戦へと変化していきました。第二次欧州大戦への道を開いたのは、1938年9月のミュンヘン協定であったとする見方が一般的ですが、もしイギリスとフランスが、スペイン内戦に際して毅然とした対応を見せていたなら、その後の欧州情勢は違った方向へと進んでいたかもしれません。

ピカソの傑作「ゲルニカ」の主題でもある、歴史的に重要な意味を持つスペイン内戦について、読者の方々が改めて関心を持つきっかけとなれば幸いです。


《目次(見出しリスト)》

ヨーロッパの西端で起こった第二次世界大戦の前哨戦

《スペイン内戦に至る道》
左右両派の暗闘と人民戦線の誕生
フランコの登場と内戦勃発

《内乱の戦場となったスペイン》
ドイツとイタリアの介入
英仏の不干渉とスターリンの思惑
新兵器・新戦術の実験場──ゲルニカの悲劇

《勝利したフランコとファシスト勢力》
エブロ川の決戦
第二次世界大戦への序曲


【付録記事】
スペイン内戦とソ連赤軍

スターリンはなぜスペイン内戦に介入したのか

《スターリンとソ連共産党の思惑》
対決を恐れるスターリン
コミンテルンと人民戦線

《スペイン内戦でソ連軍人が果たした役割》
スペインへの援助開始
「火砲の射程外に留まれ!」
勇名を轟かせた「国際旅団」の裏側

《共和国軍の敗北とスターリンの「戦利品」》
グアダラハラの戦車戦
スターリンが得たもの