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チェチェン紛争史

価格: ¥0
カテゴリ: Kindle版
ブランド: 六角堂出版
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21世紀の幕開けと共に、世界はかつての「東西冷戦」構造に代わる、新たな国際対立の時代へと突入した。特定の国家を敵と見なすのではなく、より漠然とした「テロリストとテロ支援国家」を攻撃対象とする「対テロ戦争」時代の始まりである。

だが、アメリカ合衆国によるアフガニスタンとイラクへの大規模な「対テロ戦争」の開始より数年早く、ロシアは既に、チェチェンという小国に対して、この「対テロ戦争」を実行していた。ロシア連邦からの独立を目指すチェチェンに対し、ロシアは「テロリスト」のレッテルを貼って自国民の憎悪を煽り立て、世界有数の強大な軍事力を駆使して、情け容赦のない攻撃でチェチェンの武装勢力を叩きつぶそうとしたのである。

このチェチェンでの約十年間にわたる紛争の経過については、信頼できる情報が少なく、とりわけ政治的な背景にはいまだ明らかになっていない謎の部分もあり、紛争の全体像は日本ではほとんど知られていない。だが、チェチェン紛争を様々な角度から分析していくと、この戦いがまさしく「現代紛争の縮図」に他ならないことがわかる。

独立志向が他の自治区(植民地)へと波及するのを防ぐ、あるいは国民の不満を外敵に向けて政権の安泰を図るという動機は、1982年のフォークランド紛争におけるイギリスとアルゼンチンの戦争目的と酷似しており、またテロリストへの報復という大義名分で国論を統一し、最新兵器を駆使した大規模な軍事侵攻を仕掛けるという図式は、アメリカが9.11以降に行ってきたアフガニスタンやイラクへの全面攻撃と一致している。

そして、侵略者や支配者からの主権回復を目指していたはずの武力闘争が、いつしか「聖戦」を叫ぶイスラム過激派勢力に乗っ取られて、本来の目標から逸脱した無差別テロ闘争へと変質してしまう過程も、中東やアフリカなどにおける反米勢力の状況と全く同じである。

それでは、チェチェンは何がきっかけで、大国ロシアからの独立を決断したのか。一方のロシアはなぜ、小国チェチェンに対し、これほど強烈な憎しみの感情を抱いているのか。そして、地球上で唯一のスーパーパワーとなったアメリカ合衆国は、このチェチェン紛争に、どのような対応を見せているのだろうか。

本書は、当時ロシアでも全く無名だったウラジーミル・プーチン(現大統領)が、わずか三か月ほどで「支持率70パーセントを誇るニューリーダー」としてクレムリンのトップに君臨する重要なきっかけとなったチェチェン紛争の経過と歴史的背景を、わかりやすく解説した記事です。2004年9月、学研パブリッシングの雑誌『歴史群像』第67号(2004年10月号)の記事として、B5判13ページで発表されました。

主題に関連する、チェチェン過激派勢力が引き起こした2つのテロ事件を説明した記事「モスクワ劇場占拠事件」「ベスラン学校占拠事件」(共に学研パブリッシング刊『[図説]世界の特殊作戦』【2007年4月発売】に掲載)も、巻末付録として収録しています。

《目次(見出しリスト)》

もうひとつの「対テロ戦争」

《チェチェン紛争前史》
ロシアとトルコに挟まれた山岳民族群
ロシアによるチェチェン攻撃の始まり
ロシア革命期のチェチェン
スターリンによる強制移住

《ソ連邦崩壊とチェチェンの独立》
ドゥダーエフ将軍のチェチェン独立宣言
第一次チェチェン紛争の勃発
泥沼化したロシア軍のチェチェン侵攻作戦
チェチェン独立問題の先送り

《第二次チェチェン紛争とプーチン政権の誕生》
イスラム義勇兵のチェチェンへの浸透
プーチンの登場とソ連軍のチェチェン再侵攻
チェチェン制圧とプーチン大統領の誕生

《米露両大国とチェチェン紛争の背景》
ロシアはなぜチェチェンに固執するのか
アメリカはなぜチェチェンを助けないのか

【付録記事】
チェチェン独立派勢力が引き起こしたテロ事件
1. モスクワ劇場占拠事件
2. ベスラン学校占拠事件