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ルワンダ内戦

価格: ¥0
カテゴリ: Kindle版
ブランド: 六角堂出版
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人類のルーツや地域文化の発展過程、あるいは国家間の戦争や地域紛争を研究する上で、そこに住む人々を「人種」あるいは「民族」と呼ばれる便宜上のカテゴリーに分類する手法は、決して珍しいものではない。先人たちの研究成果に基づいて、特定地域に住む人々を「人種」や「民族」ごとに分類し、それらの集団ごとに政治的傾向や価値判断基準を分析する方法は、実際の文化や政治の動きがそうした概念に影響されている場合が多いこともあり、問題の本質を理解する上で有効なアプローチの一つと考えられてきた。

だが、そのような学術上の分類が、特定の政治勢力によって利用された時、本来は社会に豊かな知見をもたらすために調査されたはずの「研究成果」が、想像を絶するほどの惨禍へと大勢の人々を突き落とすこともある。ナチス・ドイツによるユダヤ人の大量虐殺(ホロコースト)や、旧ユーゴスラビア構成国におけるエスニック・クレンジング(民族浄化)などがその実例として挙げられるが、今から20年前にアフリカ大陸のルワンダで発生した凄惨な大量殺戮においても、こうした「人種」や「民族」の区分が重要な役割を果たしていた。

ルワンダの内戦はこれまで、少数派の「ツチ族」と多数派「フツ族」による民族間闘争と説明されてきた。だが、大勢のルワンダ人を死に追いやった元凶とも言える「人種」や「民族」の区分法は、実際には信憑性のある根拠に基づくものではなく、また虐殺された犠牲者の三分の一以上は、不思議なことに虐殺者と同じ「フツ族」に属する人々だった。

ルワンダという国名は、難民救済のために自衛隊の輸送機と救援隊が派遣されたこともあり、当時は日本のメディアにもたびたび登場したが、ルワンダ内戦の経緯と、それに続く大量殺戮(ジェノサイド)の詳細は、国内ではほとんど知られていない。原子爆弾などの大量破壊兵器を用いることなく、鉈や棍棒といった原始的な武器で100万人もの人間が殺害されたルワンダの悲劇とは、どのようなものだったのだろうか。

本書は、今から20年前にアフリカのルワンダで発生した大虐殺事件の背景と経緯を、わかりやすく解説した記事です。2006年11月、学研パブリッシングの雑誌『歴史群像』第80号(2006年12月号)の記事として、B5判11ページで発表されました。

ルワンダの「ツチ族」と「フツ族」は、昔は平和的に共存していましたが、ここを植民地化したドイツとベルギーは、両者を互いに対立させ憎み合わせる統治法を用い、ルワンダ国民の間に楔を打ち込んで分断しました。その後遺症は、同国が独立を果たした後も回復せず、やがて政治家が私腹を肥やして地位保全を図るためにその対立構造を復活させると、ルワンダでは国民同士が憎み合う光景が日常化し、やがて凄惨な殺戮へとエスカレートします。その過程で大きな役割を果たしたのが、政府の黙認の下で行われた、新聞やラジオによる「ヘイトスピーチ」でした。

「ツチ族は不正直であるから、経済活動で協力しないこと。フツ族は、ツチ族に対する憐憫の情を捨てること。フツ族は、フツ族同士で連帯・団結し、社会革命のイデオロギー流布に努めること」
「ツチ族の連中に油断するな! ゴキブリどもに情けをかける必要はない。フツ族の若者よ、武器を準備せよ! そして、祖国からゴキブリを一掃する日に備えよ!」

憎悪と暴力を扇動する、こうした「ヘイトスピーチ」とそれを容認する社会が、いかなる結果を招くのか。わずか20年前の出来事ですが、現在の日本とも決して無縁ではないだろうと思います。


《目次(見出しリスト)》

「民族」という神話が生んだ悲劇

《ルワンダ内戦前史》
遊牧民族「ツチ」と農耕民族「フツ」
ヨーロッパ人の植民地支配
人種を明記した身分証明書の発行

《フツ族支配層によるツチ族の弾圧》
ルワンダ独立と政情の不安定化
少数派弾圧による多数派の結束
第一次内戦の勃発
ハビャリマナ大統領の事故死

《憎悪の再燃と大虐殺》
ジェノサイド(大量殺戮)の実行
見て見ぬふりをする欧米諸国
流血の後に残されたもの